相続手続と生前対策の総合ガイド|何から始めるかを行政書士が解説

相続について調べ始めると、戸籍、遺言書、相続放棄、遺産分割、相続登記、相続税など、多くの言葉が出てきます。

しかし、すべての人が同じ手続を行うわけではありません。

相続人の人数、財産の種類、遺言書の有無、借金の有無、不動産や事業の有無などによって、必要な手続は変わります。

また、実際に困っていることも人によって異なります。

「銀行の相続手続を進めたい」という方もいれば、「遺産分割協議書を作りたい」「会社を引き継ぐか閉じるか考えたい」「デジタル遺産を整理したい」「相続した土地を手放したい」という方もいます。

このページは、相続制度を最初から最後まで暗記するための教科書ではありません。

現在の状況や相談したい内容から、自分に必要な手続と、次に確認すべきページを見つけるための総合案内です。

相談したい内容から選ぶ

相続が発生した方

次の図で相続手続き全体のおおよその流れを確認してください。

相続手続きの全体フロー
相続手続きの全体フロー

詳細は以下の記事にまとめています。

[相続手続をまとめて進めたい]
戸籍、相続人、財産、遺産分割など、必要な手続を一度整理したい方へ。

[銀行・預貯金の相続手続を進めたい]
口座凍結、残高証明、払戻し、銀行から求められた書類でお困りの方へ。

[遺産分割協議書を作りたい]
相続人で決めた内容を、金融機関や登記などに使用する書類にしたい方へ。

[会社・事業を引き継ぐか、閉じるか決めたい]
法人、個人事業、フリーランスの仕事や資産の行き先を整理したい方へ。

[デジタル遺産を整理・引き継ぎ・解約したい]
ネット銀行、暗号資産、ドメイン、SNS、クラウド、顧客データなどを確認したい方へ。

[相続した使い道のない土地を手放したい]
売れない土地、農地、森林、原野などの処分方法を検討したい方へ。

自分の将来に備えたい方

当事務所では、「生前に遺言等の準備をすることで、残りの人生をより自由に行動できる」と考えています。
遺言その他の準備についての全体像は次の図解で確認してください。
この図解は選択肢を皆様にお知らせするもので、「全部やる必要がある」というものではありません。

遺言・任意後見

詳細は以下の内容で確認してください。また随時ブログで情報をお伝えしているので、そちらもよろしければお読みください。

[自分の死後に備えて家族の負担を減らしたい]
財産一覧、遺言書、事業やデジタル資産の引継ぎを準備したい方へ。

[身近に頼れる人がいないため、死後の手続を任せたい]
葬儀、納骨、契約解除、遺品整理などを誰に託すか決めたい方へ。

どの項目に当てはまるか分からない方は、現在困っていることをそのままお知らせください。

相続が発生したら、最初に確認すること

相続手続は、目の前に届いた銀行や役所の書類から手当たり次第に進めると、後からやり直しが生じることがあります。

まず、次の事項を確認します。

遺言書があるか

遺言書の有無によって、その後の財産の分け方や必要書類が変わります。

公正証書遺言であれば、公証役場で検索できる場合があります。自筆証書遺言については、法務局の保管制度を利用しているものを除き、家庭裁判所での検認が必要になる場合があります。

封印のある遺言書を見つけた場合は、その場で開封せず、必要な手続を確認してください。

誰が相続人になるか

家族が把握している関係と、法律上の相続人が一致するとは限りません。

被相続人の出生から死亡までの戸籍などを確認し、相続人を確定します。前婚の子、認知した子、養子、すでに亡くなっている子の子などが相続人になることもあります。

どのような財産と債務があるか

預貯金や不動産だけでなく、株式、保険、貸付金、売掛金、暗号資産、事業用財産なども確認します。

一方で、借入金、未払金、保証債務などの確認も必要です。財産だけを先に分けるのではなく、債務を含めた全体像を把握することが重要です。

期限のある手続がないか

相続には期限のある手続があります。代表的なものとして、相続放棄・限定承認、準確定申告、相続税申告、相続登記などがあります。

すべての相続で同じ手続が必要になるわけではありませんが、期限が過ぎてから気づくことを避けるため、早い段階で確認します。

会社、事業、デジタル資産、管理が必要な土地がないか

通常の相続手続と並行して、事業の継続、許認可、従業員や取引先への対応、オンラインサービスの管理、土地の維持管理などを急いで判断しなければならない場合があります。

これらがある場合は、戸籍や遺産分割だけに限定せず、何を止めずに維持する必要があるかも確認します。

相続手続をまとめて進めたい

家族が亡くなり、相続手続をまとめて進めたい

相続手続の全体像が分からない場合は、個別の書類を作る前に、相続人、財産、遺言書、債務、期限を一覧にします。

一般的には、次のような順序で整理します。

  1. 遺言書の有無を確認する
  2. 戸籍を収集して相続人を確認する
  3. 財産と債務を調査する
  4. 相続放棄や税申告などの期限を確認する
  5. 遺産の分け方を決める
  6. 必要に応じて遺産分割協議書を作る
  7. 預貯金、不動産その他の名義変更・解約等を進める

ただし、遺言書がある、借金が多い、相続人間で争いがある、経営していた会社があるなどの場合は、順序や相談先が変わります。

手続をまとめて依頼したい場合も、行政書士だけですべてが完結するわけではありません。登記は司法書士、税務申告は税理士、紛争は弁護士が担当します。大切なのは、最初からすべての専門家を自分で探すことではなく、必要な手続と担当者を整理することです。

相続手続をまとめて進めたい

坂本倫朗行政書士事務所が対応する業務内容一覧はこちら

銀行・預貯金の相続手続を進めたい

銀行は、口座名義人の死亡を把握すると、原則として口座からの通常の入出金を停止します。その後の払戻しや名義変更には、相続関係と受取人を確認するための書類が必要です。

必要書類は、遺言書の有無、遺産分割協議の状況、相続人の人数、金融機関の手続方法によって変わります。

よく求められるものには、次のような書類があります。

  • 戸籍・除籍等または法定相続情報一覧図
  • 相続人の印鑑証明書
  • 遺言書
  • 遺産分割協議書
  • 金融機関所定の相続届
  • 通帳、証書、キャッシュカード等

複数の金融機関がある場合は、戸籍等を何度も提出しなくて済むよう、使用する証明書や原本還付の扱いを確認しながら進めます。

また、口座の残高だけでなく、過去の取引履歴を確認する必要があるケースもあります。相続人が把握していなかった入出金や、他の財産につながる情報が見つかることがあるためです。

銀行・預貯金の相続手続きを進めたい方へ|口座凍結から払戻しまで
亡くなった方の預貯金を相続するには、金融機関へ死亡の事実を伝えるだけでは終わりません。相続人を確認する戸籍、遺言書または遺産分割協議書、印鑑証明書、金融機関所定の相続届などをそろえ、誰が預貯金を受け取るのかを明らかにする必要があります。複数…

銀行手続を含む相続サポートについて相談する

遺産分割協議書を作りたい

遺産分割協議書は、相続人全員で合意した財産の分け方を記録する書類です。

単に「長男が不動産を相続する」「預金は半分ずつにする」と書けばよいとは限りません。不動産を特定する表示、金融機関と口座の記載、後から見つかった財産の扱いなどを、実際の手続に使用できるように整理する必要があります。

作成前には、少なくとも次の事項を確認します。

  • 法律上の相続人が確定しているか
  • 対象となる財産を把握できているか
  • 相続人全員が分け方に合意しているか
  • 遺言書と矛盾していないか
  • 不動産、預貯金、事業用財産等を特定できるか
  • 代償金などの支払い条件があるか
  • 後から見つかった財産をどう扱うか

行政書士は、相続人全員が合意した内容を確認して遺産分割協議書を作成できます。一方、意見が対立している相続人の間に入り、代理人として交渉することはできません。

遺産分割協議書を作りたい方へ|作成前の確認事項と行政書士への依頼
遺産分割協議書は、相続人全員で合意した財産の分け方を記録する書類です。預貯金の払戻しや不動産の相続登記などで使用されるため、相続人と財産を正確に確認し、実際の手続に使える内容にする必要があります。インターネット上のひな形へ名前と財産を書き込…

会社・事業を引き継ぐか、閉じるか決めたい

事業をしている方の相続では、「会社の相続」と「経営者個人の相続」を混同しないことが重要です。

相談の入口は同じでも、法人、個人事業主、フリーランスでは確認すべき内容が異なります。

法人を経営している場合

会社が所有する預貯金、設備、契約上の権利などは、原則として経営者個人の相続財産ではありません。一方、経営者個人が所有していた会社の株式、会社への貸付金、会社へ貸していた不動産などは、相続の対象になり得ます。

代表者が亡くなった場合には、株式の相続だけでなく、後任役員、金融機関、取引先、従業員、許認可、個人保証などへの対応も必要になります。

個人事業主の場合

個人事業では、事業用の預貯金、設備、在庫、売掛金、借入金なども、原則として事業主個人に帰属しています。

事業を家族が引き継ぐのか、廃業するのかを決め、取引先、税務、許認可、屋号、設備、契約などを整理します。許認可は当然に相続できるとは限らないため、制度ごとの確認が必要です。

フリーランスの場合

業務委託契約、進行中の制作、納品前のデータ、著作権、売掛金、クラウドサービス、Webサイトなどが残ることがあります。

本人以外が契約を継続できるのか、取引先へどのように連絡するのか、顧客データを誰が扱えるのかなど、契約と個人情報を含めた整理が必要です。

会社や事業を引き継ぐか閉じるかは、相続書類だけでは決まりません。家族の希望、後継者、収益性、債務、許認可、契約、税務などを確認し、必要な専門家と手続を組み合わせます。

会社・事業を引き継ぐか閉じるか決めたい方へ|法人・個人事業・フリーランスの相続
会社経営者、個人事業主、フリーランスが亡くなった場合、預貯金や不動産の相続だけでは問題は解決しません。会社の株式、事業用財産、売掛金、借入金、進行中の仕事、取引先との契約、許認可、Webサイトや業務用アカウントなどについて、誰が管理し、事業…

デジタル遺産を整理・引き継ぎ・解約したい

デジタル遺産という言葉は、法律上の一つの財産区分を指すものではありません。

金銭的価値のある資産、契約中のサービス、本人が作成したデータ、事業継続に必要なアカウントなど、性質の異なるものが含まれます。

探したいもの

  • ネット銀行・オンライン証券
  • 暗号資産
  • 電子マネー・ポイント
  • オンライン上の売上・報酬
  • 有料のデジタルコンテンツ等

引き継ぎたいもの

  • ドメイン・Webサイト
  • レンタルサーバー
  • クラウドサービス
  • 業務用メール
  • 制作データ・著作物
  • 事業用SNSや販売アカウント

解約・削除したいもの

  • サブスクリプション
  • 通信・オンラインサービス
  • SNSアカウント
  • クラウドストレージ
  • 個人情報・顧客情報を含むサービス

問題は、家族がパスワードを知らないことだけではありません。

サービスごとに、利用契約を相続できるか、遺族からの申出で解約できるか、データを取得できるか、本人以外のアクセスが認められるかが異なります。本人のIDとパスワードを使えばよいと安易に判断すると、利用規約や情報管理上の問題が生じることがあります。

生前に準備する場合は、パスワード一覧だけを残すのではなく、資産や契約の存在、本人確認の方法、引継ぎ先、解約・削除の希望、事業への影響を分けて整理します。

デジタル遺産を整理・引き継ぎ・解約したい方へ|相続と生前準備
デジタル遺産というと、暗号資産やネット銀行を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、亡くなった後に家族が対応しなければならないものは、それだけではありません。ドメイン、Webサイト、クラウド、メール、SNS、サブスクリプション、写真・動…

相続した使い道のない土地を手放したい

土地は、相続した後に使わなくても、所有している限り管理の負担が残ります。

固定資産税がかからない土地であっても、草木、倒木、崖、建物、境界などの問題が発生することがあります。そのため、「使わないから放置する」だけでは解決になりません。

土地を手放したい場合は、次のような選択肢を検討します。

  • 一般の市場で売却する
  • 隣接地の所有者などへ引取りを相談する
  • 贈与する
  • 自治体その他の引取り制度の有無を確認する
  • 相続土地国庫帰属制度の利用を検討する

どの方法を選べるかは、土地の所在地、地目、利用状況、接道、境界、建物、担保権、管理状況などによって変わります。

農地を相続した場合

農地を相続したことについて届出が必要になる場合があります。また、農地を売却・贈与したり、農地以外の用途へ転用したりする場合には、農地法上の許可や届出が関係します。

森林を相続した場合

地域森林計画の対象となる森林を取得した場合など、土地の所有者となった旨の届出が必要になることがあります。森林の所在地、対象区域、取得原因などを確認します。

相続土地国庫帰属制度を検討する場合

相続等によって取得した土地を、一定の要件のもとで国へ帰属させる制度です。すべての土地が対象になるわけではなく、建物、担保権、境界、通路、崖、残置物など、土地の状態によっては申請できない、または承認されない場合があります。

制度名だけで判断せず、売却等を含む他の選択肢と比較したうえで検討します。

相続した使い道のない土地を手放したい方へ|売れない土地・農地・森林の整理
相続した土地を使う予定がなく、売却も難しい場合でも、所有している限り管理の負担は残ります。草木、倒木、崖、空き家、不法投棄、境界などの問題が起きれば、遠方に住んでいても対応を求められることがあります。「いらない土地だから国や自治体へ返せる」…

自分の死後に備えて家族の負担を減らしたい

生前の備えは、財産を多く持つ人だけが行うものではありません。

家族が困る原因は、財産額だけでなく、「何があるか分からない」「本人の希望が分からない」「誰が手続をするか決まっていない」ことにもあります。

まず、次の事項を整理します。

  • 家族関係と相続人になる可能性がある人
  • 預貯金、不動産、保険、株式等の財産
  • 借入金、保証、継続中の契約
  • 会社、個人事業、フリーランスとしての仕事
  • ネット銀行、暗号資産、SNS、クラウド等
  • 葬儀、納骨、遺品、ペット等に関する希望
  • 判断能力が低下した場合に頼りたい人

そのうえで、目的に応じて遺言書、財産目録、任意後見契約、財産管理委任契約、死後事務委任契約などを検討します。

一つの書類ですべてを解決しようとせず、「財産を誰に渡すか」「生前の支援を誰に頼むか」「死後の事務を誰に任せるか」を分けて考えることが重要です。

自分の死後に備えて家族の負担を減らしたい方へ|遺言・財産・事業の生前整理
相続の生前準備は、財産を多く持つ人だけが行うものではありません。家族が亡くなった後に困るのは、財産の金額が大きい場合だけではなく、「何を持っていたか分からない」「本人の希望が分からない」「事業や契約を誰が処理するか決まっていない」という場合…

生前の相続準備を坂本倫朗行政書士事務所へ相談する

身近に頼れる人がいないため、死後の手続を任せたい

亡くなった後には、相続財産の手続以外にも多くの事務が残ります。

  • 親族や関係者への連絡
  • 葬儀・火葬
  • 納骨・埋葬
  • 住居の明渡し
  • 電気、ガス、水道、通信等の解約
  • 医療費、施設利用料等の精算
  • 遺品整理
  • ペットに関する対応
  • SNS、サブスクリプション等の解約・削除

これらは、遺言書を作っただけでは当然に誰かへ依頼できるものではありません。

死後事務委任契約では、亡くなった後に行ってもらいたい事務と受任者を、生前の契約で定めます。判断能力が低下した後の支援を目的とする任意後見契約や、生前の財産管理を依頼する契約とは役割が異なります。

契約を作る際は、依頼する事務、費用、実費の支払方法、預託金、契約の見直し、受任者が対応できなくなった場合などを具体的に決めます。

身近に頼れる人がいないため死後の手続きを任せたい方へ|死後事務委任と任意後見
亡くなった後には、財産の相続以外にも、葬儀、納骨、住居の明渡し、公共料金の解約、医療費の精算、遺品整理、ペット、SNSの削除など、多くの事務が残ります。相続人がいても、遠方に住んでいる、高齢である、関係が疎遠であるなどの理由で、実際の手続を…

相続について、誰に相談すればよいか

相続は、一つの資格者だけですべての手続を担当できるとは限りません。

行政書士

戸籍の収集、相続関係説明図、財産目録、遺産分割協議書、遺言書、各種契約書、許認可や行政手続などを扱います。紛争がない状態で、必要な事実と書類を整理する場面が中心です。

司法書士

不動産の相続登記、法務局への登記申請などを扱います。

税理士

相続税の計算、相続税申告、準確定申告その他の税務を扱います。

弁護士

相続人間で意見が対立している場合の交渉、調停、審判、訴訟などを扱います。

土地家屋調査士

土地・建物の表示に関する登記、測量、境界確認などを扱います。

自分で担当者を完全に判断してから相談する必要はありません。現在の状況を説明し、必要な専門家を確認する方法もあります。

坂本事務所へご相談いただきたい相続

坂本倫朗行政書士事務所では、一般的な戸籍収集や遺産分割協議書の作成に加え、次のような相続に力を入れています。

会社・個人事業・フリーランスが関係する相続

会社の株式、個人名義の事業用資産、許認可、契約、売掛金、制作物などを含めて整理します。

デジタル資産が関係する相続

ネット上の財産だけでなく、ドメイン、クラウド、顧客データ、業務用アカウントなど、事業継続と情報管理に関係するものも確認します。

使い道のない土地が関係する相続

農地、森林、原野、遠方の土地などについて、売却以外の可能性や必要な行政手続を整理します。

複数の専門家が必要になる相続

登記、税務、紛争、測量などが関係する場合は、それぞれの専門分野を明確にし、必要に応じて他士業と連携します。

相談する段階か迷っている方へ

次のいずれかに当てはまる場合は、一度、必要な手続を整理することをおすすめします。

  • 相続が発生したが、何から始めるか決まっていない
  • 相続人や財産の全体像を把握できていない
  • 複数の銀行、不動産、会社・事業が関係している
  • 遺産分割協議書を自分で作成してよいか不安がある
  • 故人のデジタル資産や契約を家族が把握していない
  • 相続した土地を利用する予定がなく、管理が負担になっている
  • 自分の死後に事業やアカウントをどうするか決めていない
  • 行政書士、司法書士、税理士、弁護士の誰に相談するか分からない

問い合わせの時点ですべての資料を用意する必要はありません。

分からない項目は「分からない」としたうえで、現在困っていること、被相続人との関係、把握している財産、会社・事業やデジタル資産の有無、不動産のおおよその所在地などをお知らせください。