相続した土地を使う予定がなく、売却も難しい場合でも、所有している限り管理の負担は残ります。
草木、倒木、崖、空き家、不法投棄、境界などの問題が起きれば、遠方に住んでいても対応を求められることがあります。
「いらない土地だから国や自治体へ返せる」とは限りません。売却、隣接地所有者等への譲渡、相続土地国庫帰属制度などの選択肢を、土地の状態と規制に応じて検討する必要があります。
このページでは、農地・森林という行政上の分類から入るのではなく、「相続した土地を手放したい」という相談目的から、確認すべき事項と選択肢を整理します。
このページは、このような方のためのものです
- 親から遠方の土地を相続したが使う予定がない
- 不動産会社へ相談しても売れないと言われた
- 農地や山林を相続したが、場所や状態が分からない
- 固定資産税や草刈りなどの負担だけが続いている
- 相続土地国庫帰属制度を利用できるか知りたい
- 土地を相続放棄できると思っていた
- 土地の登記や境界に問題がある
最初に確認すること
土地の所在地と登記
登記事項証明書、公図、固定資産税の資料などから、所在、地番、地目、面積、所有者、抵当権等を確認します。
家族が認識している土地と登記上の土地が一致しない、複数の筆に分かれている、共有になっていることもあります。
現在の利用状況
宅地、農地、森林、原野、道路、墓地など、登記上の地目だけでなく、現地がどのように使われているかを確認します。
建物、工作物、樹木、残置物、第三者の使用、賃貸借などがある場合は、単純に土地だけを譲渡できないことがあります。
接道・境界・高低差
道路へ接しているか、隣地との境界が明らかか、崖や急傾斜があるかなどは、売却や国庫帰属制度の検討に影響します。
測量や境界確定が必要な場合は土地家屋調査士へ相談します。
規制と届出
農地法、森林法、都市計画、建築、自然公園、土砂災害等の規制が関係することがあります。
土地の所在地と利用状況を確認し、管轄行政機関へ必要な手続を照会します。
管理上の問題
草刈り、倒木、崩落、害虫、不法投棄、老朽建物など、現在対応が必要な問題がないか確認します。
手放す方法を探している間も、周囲へ危険を及ぼす状態は放置できません。
土地を手放すための主な選択肢
売却する
通常の仲介だけでなく、隣接地の所有者、その地域の土地を扱う事業者、農地・山林を専門とする事業者などへ相談する方法があります。
価格が付かない場合でも、測量費、残置物撤去費、仲介費用等を誰が負担するかによって引取りの可能性が変わることがあります。
贈与・引取りを相談する
隣接地所有者や地域の関係者にとって利用価値がある場合は、贈与や低額譲渡を検討できることがあります。
相手の同意が必要であり、税金、登記費用、農地法等の許可も確認しなければなりません。一方的に所有権を放棄したり、自治体へ押し付けたりすることはできません。
相続土地国庫帰属制度を検討する
相続等によって取得した土地について、一定の要件を満たし、審査と負担金の納付を経て国庫へ帰属させる制度です。
すべての土地が対象になるわけではありません。代表的には、次のような事情が問題になります。
- 建物がある
- 担保権や使用収益権が設定されている
- 通路、水路、墓地等として利用されている
- 境界が明らかでない、所有権争いがある
- 崖があり、管理に過分な費用・労力がかかる
- 土地上・地下に除去が必要なものがある
- 管理や処分に過分な費用・労力がかかる
申請前に、対象にならない土地ではないか、承認を妨げる事情がないか、問題を解消できるかを確認します。
行政書士は承認申請書等の作成を代行できますが、任意代理人として申請手続そのものを行うことはできません。原則として、申請者本人が法務局へ申請します。
相続放棄を検討する
相続放棄は、不要な土地だけを選んで放棄する手続ではありません。原則として、その相続について財産も債務も含めて相続人ではなかったことになります。
土地以外の預貯金などを受け取り、土地だけを相続放棄することはできません。また、期限や財産処分との関係があるため、早い段階で弁護士または司法書士へ相談します。
農地を相続した場合
農地を相続した場合、農業委員会への届出が必要になることがあります。
相続自体について農地法上の許可が不要でも、その後に売却・贈与する、農地以外へ転用する場合には、許可や届出が必要になることがあります。
農地法上の区分、地域、利用状況、取得希望者の資格などによって進め方が変わります。「農地だから売れない」「相続人なら自由に転用できる」と決めつけず、農業委員会等へ確認します。
森林を相続した場合
地域森林計画の対象となる森林の土地を取得した場合などは、所有者となった旨の届出が必要になることがあります。
森林は、現地の位置や境界が分かりにくいことがあります。登記、固定資産税資料、森林簿・森林計画図等の情報を確認し、立木、林道、隣接地、管理状況を整理します。
伐採、開発、譲渡等を行う場合は、別の届出や許可が必要になることがあります。
空き家がある場合
土地上に建物がある場合は、土地だけでなく建物の相続登記、管理、解体、売却等も検討します。
相続土地国庫帰属制度では建物がある土地は申請段階で問題になるため、解体すればよいのか、解体費用をかけても制度利用が合理的かを比較します。
老朽化して危険がある場合は、手放す方法が決まるまでの安全管理も必要です。
坂本事務所へ依頼できること
- 土地の登記・固定資産税資料等の整理
- 土地の所在地、地目、利用状況、規制の確認項目整理
- 相続土地国庫帰属制度を検討するための事前整理
- 農地・森林に関する届出・許可等の確認
- 関係行政機関への事前照会
- 行政書士が作成できる申請書・添付書類の作成
- 司法書士、土地家屋調査士、税理士、不動産事業者等との連携
土地の引取りや国庫帰属の承認を保証するものではありません。土地の状態、法令上の要件、費用を確認したうえで、利用できる可能性のある選択肢を整理します。
よくあるご質問
不要な土地だけ相続放棄できますか
できません。相続放棄は、原則としてその相続に属する財産・債務全体について相続人ではなかったことになる手続です。
固定資産税がかからない土地なら放置してもよいですか
固定資産税の有無と、所有者としての管理問題は別です。倒木、崩落、不法投棄などの問題が起きる可能性があります。
国庫帰属制度を使えば必ず手放せますか
必ず承認されるものではありません。土地の状態に関する要件、審査、負担金があります。申請前の確認が重要です。
土地の場所がよく分からなくても相談できますか
登記、固定資産税資料、公図等から確認を始められます。現地調査や境界確認が必要な場合は、土地家屋調査士等と連携します。
「農地だから」「森林だから」ではなく、手放す目的から整理します
相続した土地の問題は、行政上の地目を確認するだけでは解決しません。
相談者が土地を手放したい理由、現在の管理負担、土地の状態、利用できる制度、必要な費用を並べ、現実的な出口を検討します。

