会社経営者、個人事業主、フリーランスが亡くなった場合、預貯金や不動産の相続だけでは問題は解決しません。
会社の株式、事業用財産、売掛金、借入金、進行中の仕事、取引先との契約、許認可、Webサイトや業務用アカウントなどについて、誰が管理し、事業を続けるのか、終了するのかを判断する必要があります。
相談者から見れば、いずれも「事業をどうするか」という一つの問題です。しかし、法人、個人事業主、フリーランスでは、相続の対象になるものと必要な手続が異なります。
このページでは、一つの相談窓口から、事業形態に応じて確認すべき内容を整理します。
このページは、このような方のためのものです
- 自分の会社を子どもへ継がせるか迷っている
- 社長が亡くなり、会社を誰が動かせばよいか分からない
- 後継者がいないため、会社を閉じることも検討している
- 個人事業を家族が引き継げるか知りたい
- フリーランスの進行中案件や売掛金を整理したい
- 会社や事業で使っていたアカウントに家族がアクセスできない
- 許認可や取引契約を継続できるか分からない
最初に「法人か、個人事業か」を確認する理由
法人は、経営者個人とは別の権利義務の主体です。
経営者が亡くなっても、会社名義の預貯金、設備、不動産、売掛金などが、そのまま経営者個人の相続財産になるわけではありません。一方、経営者個人が所有する会社の株式、会社への貸付金、個人名義で会社へ貸している不動産などは相続財産になり得ます。
個人事業では、事業用口座、設備、在庫、売掛金なども、原則として事業主個人に帰属します。
まず事業形態を確認し、「会社に属するもの」「個人に属するもの」「契約上の確認が必要なもの」に分けます。
法人経営者の相続で確認すること
会社の株式
経営者が所有していた株式は、相続財産になり得ます。株式の行き先は、会社の支配や後継者の意思決定に直結します。
株主名簿、定款、株式の譲渡制限、遺言書、相続人を確認し、誰が株式を取得するかを検討します。税務上の評価や納税については税理士への確認が必要です。
代表者・役員
代表取締役が亡くなった場合、会社として後任者の選定や役員変更登記等が必要になります。
会社の機関構成や定款によって手続が変わるため、司法書士等と連携して早急に確認します。
経営者個人と会社の貸し借り
経営者から会社への貸付金、会社から経営者への貸付金、個人名義の不動産や車両を会社が使用している場合などは、相続と会社経理の双方から確認します。
金融機関・個人保証
会社借入に経営者の個人保証が付いている場合、相続人に影響する可能性があります。借入契約、保証契約、担保を確認し、金融機関へ相談します。
許認可
代表者や役員の変更届が必要になる場合、資格者や人的要件に影響する場合、経営者の死亡によって事業継続が難しくなる場合があります。
許認可ごとに承継や変更の制度が異なるため、事業を止めないために早期確認が必要です。
契約・アカウント
主要取引先との契約、賃貸借、リース、保険、ドメイン、サーバー、決済、クラウドなどを確認します。代表者個人名義で契約しているものが混在している場合は、会社名義への変更や代替契約が必要になることがあります。
個人事業主の相続で確認すること
事業用財産と債務
事業用口座、現金、売掛金、設備、車両、在庫、借入金、買掛金などを確認します。家庭用の財産と混在している場合は、帳簿、確定申告書、契約書等から整理します。
事業を引き継ぐ人
家族が同じ事業を続ける場合でも、屋号や顧客をそのまま引き継げば終わるとは限りません。
税務上の開廃業手続、契約の再締結、口座、許認可、従業員、設備などを確認します。
許認可
許認可は、相続による承継制度があるもの、承認・届出が必要なもの、新たな許可が必要なものなどに分かれます。
事業を継続する意思がある場合は、許認可の空白期間を生じさせないよう、管轄行政機関へ確認します。
廃業する場合
税務上の廃業手続だけでなく、取引先への連絡、契約解除、売掛金の回収、買掛金・借入金の支払い、在庫や設備の処分、顧客情報の処理などが必要です。
フリーランスの相続で確認すること
進行中の業務委託契約
本人が亡くなった後も契約上の義務が残るのか、契約が終了するのか、制作途中の成果物をどうするのかを確認します。
本人の技能や信用を前提とする仕事は、そのまま家族が引き継げないことがあります。取引先への連絡と、納品済み・未納品・未請求の区分が必要です。
売掛金と未完成案件
すでに完了した仕事の未払報酬は、相続財産になり得ます。請求書、契約書、メール、会計記録等を確認します。
未完成案件については、報酬請求の可否、前受金の返還、外注先への支払いなどを契約に沿って整理します。
著作権・制作データ
文章、写真、動画、デザイン、プログラムなどの著作権や利用許諾契約が関係する場合があります。
著作権そのものと、クラウド上の制作データ、取引先が利用できる権利を分けて確認します。
顧客情報とデジタルアカウント
顧客名簿、メール、チャット、クラウド、ドメイン、SNS、決済サービスなどには、個人情報や秘密情報が含まれます。
家族がIDとパスワードを知っているだけで自由に利用できるとは限りません。契約、利用規約、本人確認、情報管理を踏まえて、引継ぎ・返却・削除を判断します。

引き継ぐか閉じるかを判断するための整理
事業を継続するか終了するかは、相続人の希望だけでなく、次の事項を並べて判断します。
- 後継者の意思と能力
- 事業の収益と資金繰り
- 借入金・個人保証
- 株式と議決権
- 主要取引先・従業員
- 許認可・資格者
- 事業用資産と不動産
- 契約・リース・サブスクリプション
- デジタル資産・顧客データ
- 税務上の影響
坂本事務所が事業の採算や株価を単独で決定するものではありません。法務・行政手続・契約・資産の状況を整理し、必要に応じて税理士、司法書士、弁護士その他の専門家と連携します。
生前に準備できること
経営者本人が元気なうちであれば、選択肢を増やせます。
- 株式と事業用財産の所在を明らかにする
- 後継者候補と意思を確認する
- 遺言書で株式等の行き先を定める
- 個人名義と法人名義の契約を整理する
- 許認可の要件と変更手続を確認する
- 重要なアカウントとデータの引継ぎ方法を決める
- 緊急時の連絡先と権限を整理する
- 廃業を選ぶ場合の手順も決めておく

坂本事務所へ依頼できること
- 法人・個人事業・フリーランスの状況整理
- 個人財産と会社財産の資料上の区分
- 株式・事業用財産を含む財産目録の作成支援
- 戸籍収集、相続関係説明図、遺産分割協議書
- 契約・許認可・デジタル資産の確認項目整理
- 遺言書その他の生前準備に関する書類作成
- 承継または廃業に必要となる専門家・行政手続の整理
登記、税務申告、株価評価、相続人間の交渉などは、それぞれ司法書士、税理士、弁護士等と連携します。
よくあるご質問
会社の預金も社長個人の相続財産ですか
法人名義の預金は会社の財産であり、原則として社長個人の相続財産ではありません。一方、社長が所有する会社株式や会社への貸付金などは相続財産になり得ます。
個人事業は家族がそのまま続けられますか
事業内容によって異なります。税務、契約、許認可、口座、従業員等を確認し、家族が新たに行うべき手続を整理します。
後継者が決まっていなくても相談できますか
相談できます。引継ぎと終了の双方について、資産、契約、許認可、アカウント等の確認事項を整理します。
会社の価値や相続税も計算してもらえますか
株価評価や相続税の計算・申告は税理士の業務です。必要に応じて税理士と連携します。
事業の相続は、止めてはいけないものから確認します
会社・事業の相続では、遺産分割の完了を待たずに対応しなければならない事項があります。
従業員、取引先、金融機関、許認可、顧客データ、サーバーなど、事業を止めないために必要なものを確認し、そのうえで引継ぎまたは終了の手順を整理します。
