亡くなった経営者に借金や個人保証があるかもしれないときは、会社の借入れと本人の債務を分けます。そのうえで、保証契約、担保、返済状況を確認してください。
会社が銀行から借りたお金は、会社の債務です。社長が亡くなっただけで、その借入金すべてが相続人の借金になるわけではありません。ただし、社長個人が連帯保証人になっていた場合や、社長名義の不動産を担保に入れていた場合は、個人の相続にも影響します。
会社や事業が関係する相続では、この記事で扱う問題だけでなく、相続人、財産、期限のある手続を全体で見ておく必要があります。最初から順に確認したい方は、相続手続の全体像もあわせてご覧ください。
金融機関名だけでなく契約上の立場を確認する
返済予定表や銀行からの郵便物が見つかったら、次の四つを確認します。
- 借りた人は会社か、故人個人か
- 故人は連帯保証人になっているか
- 故人名義の不動産や預金が担保になっているか
- 返済の遅れや期限の利益喪失に関する通知がないか
同じ金融機関との契約でも、会社の運転資金、故人個人の住宅ローン、会社借入れの個人保証は別の契約です。契約書が見つからなければ、会社の経理担当者や顧問税理士にも確認し、金融機関へ相続人として照会する方法を相談します。
会社の決算書から見つかる債務もある
会社の貸借対照表と勘定科目内訳明細書には、金融機関からの借入れや、社長との貸し借りが記載されていることがあります。
「役員借入金」は、一般には会社が役員から借りている金額です。この場合、社長は会社に対する貸付金債権を持っていた可能性があり、借金ではなくプラスの相続財産として確認します。
反対に「役員貸付金」があれば、会社が社長へ貸していた可能性があります。社長が会社へ返す義務が残っていれば、相続債務になることがあります。科目名だけで決めず、総勘定元帳、入出金、金銭消費貸借契約書を照合してください。
保証が見つかったら、会社の返済状況も確認する
個人保証がある場合でも、会社が契約どおり返済していれば、直ちに保証人へ全額の請求が来るとは限りません。しかし、保証人が亡くなった後の扱いや、新しい保証人を求めるかどうかは契約と金融機関の判断によります。
会社の役員と金融機関には、次を確認します。
- 現在の借入残高
- 毎月の返済額と次回返済日
- 延滞の有無
- 保証契約の種類と範囲
- 担保に入っている財産
- 代表者変更後に求められる手続
会社の資金繰りが悪化している場合は、相続の問題だけでなく、会社側の返済計画も同時に検討します。
財産の処分を急ぐ前に相続放棄を検討する
借金や保証債務が多い可能性があるなら、故人の預金を生活費に使ったり、事業用資産を売却したりする前に、弁護士へ相談してください。相続財産を処分した行為が、その後の相続放棄に影響することがあります。
相続放棄は、原則として相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。調査が間に合わない場合に期間を伸長する申立てもありますが、自動的に延長されるわけではありません。裁判所の相続放棄案内を確認し、期限前に対応してください。
誰に何を相談するか
- 弁護士:相続放棄、限定承認、保証債務、債権者対応
- 税理士:会社と故人の貸し借り、決算書、相続税への影響
- 司法書士:担保不動産の登記、代表者変更登記
- 行政書士:相続関係と財産資料の整理、許認可への影響
- 金融機関:借入残高、保証契約、法人口座、今後の返済
次の確認へ進む
この記事の問題と一緒に確認しておきたい手続を、次の2本で説明しています。現在の状況に近い方からお読みください。
- 会社経営者の父が亡くなったら最初に確認すること|会社と個人の相続を分けて整理(執筆中)
- 社長が会社へ貸していたお金は相続財産になる?|遺産分割協議書を作る前の確認(執筆中)
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借入契約書が見つからなくても、会社名、取引銀行、担保不動産など、分かることから確認できます。当事務所では、行政書士が担当できる部分と、弁護士などへ依頼する部分を分けてご案内します。


