「うちは昔から、電話一本で回してきましたよ」
一人親方に仕事を出している元請の方から、こう聞くことがあります。
気心の知れた相手と、口約束で進める。
現場では、それで回ってきました。
ですが、フリーランス新法で、その発注のしかたに見直しが求められるようになりました。
動きを求められるのは、仕事を出す側です。
本記事では、現場で一人親方に外注する元請の視点で、何が変わったのかを整理します。
なお、法律の内容や適用範囲は本記事執筆時点のものであり、改正や運用で変わりうる点はご了承ください。
フリーランス新法は「発注する側」に関わる法律
まず、この法律が誰に関わるのかを押さえます。
誰が対象になるのか(発注側・一人親方側)
この法律は、従業員を雇わずに事業を営む個人などに業務を委託する取引を対象にしています。
一人親方に仕事を出す元請は、発注する側として関わってきます。
受ける側が一人で請けている職人であれば、対象になる場面があります。
建設現場の外注・常用にどう関わるのか
現場では、外注や常用といった形で一人親方に仕事を回すことがあります。
こうした取引も、中身によっては対象に含まれる場面があります。
「いつもの応援だから」で済ませず、関わりうるものとして見ておくほうが安全です。
これまでの口頭発注と何が違うのか
これまでは、電話やその場のやり取りで発注することが珍しくありませんでした。
新法では、その「あうんの呼吸」に、条件を書いて渡すという形が求められるようになりました。
慣れた相手ほど、見直しが後回しになりがちです。
発注側に求められるようになった主なこと
発注する側に、いくつかの対応が求められるようになりました。
取引条件を書いて渡す(書面・電磁的方法)
何を、いくらで、いつまでに。
取引の条件を、書面や電磁的な方法で示すことが求められます。
口頭だけで進めてきた発注は、ここで見直しが必要になります。
報酬の支払期日の考え方
報酬をいつ支払うか。
支払期日についても、一定の考え方が示されています。
「請求が来てから考える」ではなく、あらかじめ整理しておきたい部分です。
避けたい扱い(一方的な変更・やり直し等)
一方的な報酬の減額、受領の拒否、やり直しの強要。
発注側の立場を背景にした、こうした扱いが避けるべきものとして整理されています。
どこまでが問題になるかはケースによって異なりますが、無理を通さない前提で考えておくことです。
現場系の発注で見直したい場面
現場の発注には、見直しておきたい場面があります。
口頭・LINEだけで発注している
「明日、あの現場に入ってほしい」をLINEや電話だけで済ませている。
後から条件を確認できる形になっていないと、食い違いが起きやすいものです。
まずは条件を書いて渡す形に切り替えていきます。
金額や工期があいまいなまま現場が動く
金額も工期も、はっきり決めないまま現場が動き出す。
終わってから「聞いていた話と違う」となるのは、ここが原因です。
あいまいさを残さないことが、トラブルを防ぎます。
建設業法の書面義務との重なり
建設業の取引には、もともと建設業法の書面に関するルールがあります。
新法とあわせて、どの書面が必要になるかを整理しておきたいところです。
重なる部分は、一度まとめて見直すと効率的です。
整える実務的な順序
一度に全部を変えようとすると、かえって止まります。
順番に進めるのが現実的です。
まず「条件を書いて渡す」を当たり前にする
完璧な書面を作る前に、まずは条件を書いて渡す習慣から始めます。
これだけでも、あいまいな発注はかなり減ります。
発注書・注文請書の雛型を自社の取引に合わせる
借りてきた雛型は、自社の取引と合わない部分が残りがちです。
実際の現場の取引に合わせて、必要な項目を足し引きしていきます。
見直し時期を決めて運用する
一度整えて終わりにせず、いつ見直すかを決めておきます。
法改正や取引の変化に追随できる形にしておくと、後が楽です。
行政書士に相談するメリット
発注の書面整備は、行政書士が関われる場面です。
自社の外注に合わせた発注書・契約書の設計
借り物ではなく、自社の外注の実態に合わせて発注書や契約書を組み立てます。
何を委託し、どう支払うかから整理していきます。
建設業許可・下請取引の書面とあわせた点検
建設業許可や下請取引に関わる書面と、新法で求められる書面。
これらをあわせて点検し、二重の手間や抜けを減らします。
よくある質問
口頭で続けてきた応援・常用も対象になりますか
取引の中身が対象に当たれば、口頭で続けてきたものも関わってきます。
これを機に、条件を書いて渡す形に切り替えていくのが安全です。
建設業法の書面と二重で必要になりますか
それぞれが求めるものは別の趣旨です。
重なる部分もあるため、どの書面が必要かを一度整理しておくとよいでしょう。
個別の判断は専門家への確認をおすすめします。
書面はLINEやメールでもよいですか
電磁的な方法も認められる場面があります。
ただし、後から内容を確認できる形で残しておくことが大切です。
一人親方側から条件を求められたらどうしますか
条件を書いて渡すことは、新法で求められている対応です。
求められてから慌てるより、あらかじめ発注書の形を整えておくほうが落ち着いて対応できます。
まとめ
フリーランス新法で最初に動きを求められるのは、仕事を出す元請の側です。
口約束で回してきた発注を、条件を書いて渡す形に変えていく。
それが、見直しの出発点になります。
一度にすべてを整える必要はありません。
まずは「条件を書いて渡す」を当たり前にするところから始めてみてください。
発注書や契約書の見直し、建設業法の書面とあわせた点検でお困りのことがあれば、一度ご相談ください。
なお、労働者性や社会保険といった論点は、それぞれ弁護士・社会保険労務士の領域に関わります。必要に応じて、あわせて専門家にご相談ください。


