「とりあえずローンチして、規約は後で整えます」
新しいウェブサービスを立ち上げる方から、よく聞く言葉です。
気持ちは分かります。動くものを世に出すほうが、先に思えます。
ですが、利用規約は「揉めたとき」のためではなく「揉める前」のための装置です。
後回しにすると、トラブルが起きてから慌てて作ることになります。
そして、起きてから作る規約は、その件にはもう間に合いません。
本記事では、後回しにすると何を失うのかを、行政書士の立場から整理します。
利用規約が後回しになりがちな現場
なぜ規約は後回しになるのか。
理由はだいたい決まっています。
開発と公開を優先して規約を後付けにする流れ
開発も集客も、目に見える成果につながります。
規約は、トラブルが起きるまで成果が見えません。
だから優先度が下がり、後回しになります。
他社の利用規約をコピーして済ませてしまう発想
「似たサービスの規約を持ってくればいい」
そう考える方は少なくありません。
ですが、他社の規約には、その会社の業態を前提とした条項が混ざっています。
自社のサービスと合わない部分が、そのまま残ってしまいます。
「使われ始めてから整えればいい」という見立て
利用者がついてから整えればよい、という発想です。
ところが、利用者が増えてからの規約変更には、同意の取り直しという手間が伴います。
小さいうちに整えておくほうが、結局は軽く済みます。
規約が整っていない状態で起こる典型トラブル
規約が曖昧なまま運営すると、似たようなトラブルが起きます。
解約・返金をめぐる利用者との言い分の食い違い
「返金してほしい」「いや、規約では返金不可のはず」
その規約がどこにも書かれていないと、言い分のぶつかり合いになります。
書いてあれば説明できることが、書いていないと説明できません。
投稿・コンテンツの権利関係の主張ズレ
利用者が投稿したコンテンツを、運営側がどこまで使えるか。
ここを決めていないと、後から「勝手に使われた」という話になりがちです。
サービス停止・データ削除時の責任範囲
サービスを止めたとき、データが消えたとき。
どこまで責任を負うのかを決めていないと、想定外の請求につながることがあります。
個人情報・利用データの取扱いに対する不安
利用者は、自分の情報がどう扱われるかを気にします。
規約やポリシーで示せていないと、それ自体が不信感になります。
BtoB・BtoC・無料/有料で論点が変わる
ひとくちに利用規約と言っても、相手と料金体系で論点は変わります。
BtoC(消費者向け)で特に注意する条項
消費者向けのサービスでは、消費者契約法や特定商取引法といった、消費者を保護するルールが関わってきます。
事業者に一方的に有利な条項は、効力が認められないことがあります。
本記事執筆時点の一般論として、消費者向けでは特に丁寧な設計が求められます。
BtoB(事業者向け)で意識する商慣行
事業者同士の取引では、当事者間で合意した内容が比較的尊重されやすい傾向があります。
ただし、自由に書けるからこそ、条項の抜けがそのまま争点になります。
無料サービスでも責任から逃れられない場面
「無料だから責任は負わない」と書けば済む、とは限りません。
無料でも、利用者に損害が及べば責任が問われる場面はあります。
無料か有料かで、書き方は変わってきます。
最低限押さえておきたい条項の論点
サービスによって必要な条項は変わりますが、論点として外しにくいものがあります。
禁止事項とサービス停止・利用停止の運用
何を禁止し、違反したときにどう対応するか。
停止の手順まで決めておくと、運用で迷いません。
免責・損害賠償の範囲
どこまで責任を負い、どこからは負わないか。
ここは消費者向けだと制限がかかる場面もあるため、一般論で言えば慎重な設計が要ります。
知的財産権・投稿コンテンツの権利帰属
サービス上のコンテンツや、利用者の投稿の権利をどう扱うか。
後で揉めやすい論点なので、先に決めておきたいところです。
個人情報の取扱い(プライバシーポリシーとの整合)
利用規約とプライバシーポリシーで、書いていることが食い違わないように。
二つの文書の整合が取れているかを確認します。
規約変更時の周知方法と同意の取り方
サービスは変わっていきます。
変更したときにどう知らせ、どう同意を得るか。
この手順を先に決めておくと、後の変更が楽になります。
「コピペ規約」が抱えるリスク
他社の規約をそのまま使うことには、固有のリスクがあります。
自社サービスの実態と規約が乖離する
規約に書いてあることと、実際の運営がずれていく。
ずれた規約は、いざというとき役に立ちません。
他社の業態前提が混入してしまう
物販前提の条項、サブスク前提の条項。
業態が違えば、不要な条項や足りない条項が出ます。
法改正に追随できない構造
借りてきた規約は、誰がメンテナンスするかが曖昧です。
法改正があっても、追随されないまま放置されがちです。
行政書士に相談するメリット
利用規約の整備は、行政書士が関われる場面です。
自社サービスに合わせた条項の組み立て
借り物ではなく、自社のサービスの実態に合わせて条項を組み立てます。
何を提供し、何を提供しないかから整理していきます。
プライバシーポリシー・特商法表記との整合
利用規約だけでなく、関連する表記とまとめて整合を取ります。
文書同士の食い違いを防ぎます。
規約改定のサイクル設計
一度作って終わりではなく、いつ見直すかまで設計します。
法改正やサービス変更に追随できる形にしておきます。
よくある質問
他社の規約を参考にしてよいですか
構成の参考にする分には問題ありません。
ただし、そのまま流用すると自社と合わない条項が残ります。
あくまで自社の実態に合わせて組み直す前提で使ってください。
規約はいつのタイミングで作るのが正解ですか
公開前が理想です。
利用者がつく前のほうが、同意を得る手間が軽くて済みます。
規約を変更したいときの手順は
変更内容を周知し、同意を取る流れが基本です。
具体的な方法は、規約自体に「変更時の手続き」を書いておくと進めやすくなります。
プライバシーポリシーと利用規約は別にすべきですか
役割が違うので、分けて作るのが一般的です。
そのうえで、両者の内容が食い違わないように整合を取ります。
まとめ
利用規約は、揉めてから作っても、その件には間に合いません。
解約・返金、コンテンツの権利、データの扱い。
後回しにすると、これらを説明する言葉を失います。
完璧な規約を一度で作る必要はありません。
まずは自社のサービスで「何を提供し、何を提供しないか」を言葉にするところからで十分です。
規約の組み立てや、ポリシーとの整合でお困りのことがあれば、一度ご相談ください。


