飲食店のグリストラップ(厨房の排水から油をせき止める装置)を清掃し、くみ出した汚泥をそのまま車に積んで帰る。清掃業者にとっては当たり前の流れかもしれません。
「自分たちが掃除して出した汚泥なのだから、自社のゴミとして運べる」。そう考えて、産業廃棄物収集運搬業の許可を持たずに汚泥を運んでいる業者は少なくありません。
しかし東京都は、この考え方をはっきり否定しています。この記事では、その理由と、許可を取るなら今動くべき理由を解説します。
1. 東京都の見解:清掃業者は「排出事業者」になれない
廃棄物処理法では、自分のゴミを自分で運ぶなら許可は不要で、他人のゴミを運ぶなら許可が必要です。そのため「汚泥は誰のゴミか」が、許可の要否を分けます。
※排出事業者=そのゴミを出した者として、最後まで適正に処理する責任を負う事業者。
この点について東京都環境局は、社員食堂のグリストラップから出る汚泥の扱いを問われ、次のように回答しています。
- 排出事業者は、グリストラップを設置している事業者(ビルの所有者等)
- メンテナンス業者や清掃業者が排出事業者となることはできない
つまり、清掃業者がくみ出した汚泥は「お店やビルのゴミ」です。それを清掃業者が運べば、他人のゴミの運搬になります。契約書に「汚泥は清掃業者が処理する」と書いても、この扱いは変わりません。
許可を持たずに汚泥を持ち帰っている清掃業者は、東京都の見解に照らすと、今まさに無許可で運搬している状態です。
2. 頼んでいるお店・ビルも責任を問われる
問題になるのは清掃業者だけではありません。汚泥の運搬を許可のない業者に任せたお店やビルの側も、排出事業者として「委託基準違反」の責任を問われます。
実際に東京都は、許可を取り消された業者に解体工事のゴミの運搬を任せた排出事業者が、委託基準違反で書類送検された事例を示し、排出事業者責任の徹底を呼びかけています。
お店やビルの管理者がこのことを知れば、許可を持たない清掃業者との契約は続けられません。逆に言えば、許可を持つ清掃業者は「安心して清掃も汚泥の引き取りも任せられる業者」として選ばれる立場になります。
3. 年度契約を取るなら、入札の時点で許可が必要です
学校の給食室や公共施設のグリストラップ清掃は、自治体が4月始まりの年度契約で発注するものが多くあります。たとえば川崎市や那覇市は、給食施設の排水設備やグリーストラップの清掃を、汚泥の収集運搬を含む年度単位の業務として発注しています。
こうした発注では、汚泥を扱える産業廃棄物収集運搬業の許可を持っていることが参加の条件です。守口市の仕様書のように、入札参加の申請時に許可証の写しの提出を求める例もあります。つまり、契約が始まる日ではなく、入札に参加する時点で許可が必要です。
一方、許可は申請してから下りるまでに60〜90日ほどかかります(自治体により異なります)。その前に講習会の修了と書類の準備が必要で、講習会の日程によってはさらに時間がかかります。
狙っている契約がある場合は、入札の時期から逆算して、半年ほど前には準備を始めるのが安心です。
4. 東京23区の注意点:野菜くずは産廃の許可では運べない
グリストラップの汚泥は、油分がおおむね5%以上なら「汚泥」と「廃油」の混合物、5%未満なら「汚泥」として、産業廃棄物になります。
ただし、飲食店のグリストラップに野菜くずなどが相当量混ざっている場合、その野菜くずは一般廃棄物(家庭ごみと同じ区分)として扱われ、汚泥との混合物になります。一般廃棄物を運ぶには、産業廃棄物とは別に、市区町村の許可が必要です。
ところが東京23区では、事業系一般廃棄物の処理体制は足りているとして、各区が一般廃棄物収集運搬業の新規許可を原則出さない方針をとっています。たとえば文京区は、令和3年度から新規許可を実施していません。
そのため、東京23区で現実的な進め方は次のとおりです。
- 産業廃棄物収集運搬業の許可を「汚泥」「廃油」の品目で取る
- 野菜くずなどの一般廃棄物は、受けカゴでお店側に分けてもらい、お店が契約している一般廃棄物の許可業者に出してもらう
- 清掃業者は、汚泥と油だけを運ぶ
5. 許可が「いる」「いらない」早見表
| ケース | 清掃業者の産廃許可 |
|---|---|
| 清掃業者が、くみ出した汚泥を持ち帰る | いる |
| 清掃だけ行い、汚泥はお店が別の許可業者に引き渡す | いらない(清掃業者は運ばない) |
| お店のスタッフが、自分で処理業者に持ち込む | いらない(お店が自分のゴミを運ぶ扱い) |
| ビルの共用グリストラップを清掃し、汚泥を持ち帰る | いる(契約の相手はビルの所有者・管理者) |
| 許可を持つ清掃業者が、汲み取りだけ別の業者に回す | 原則不可(「再委託」にあたる) |
グリストラップ清掃を「清掃も汚泥の引き取りも、まとめて請ける仕事」にするなら、許可は欠かせません。
6. 許可の取得は、早めの準備から
坂本倫朗行政書士事務所は、東京都板橋区の事務所ですが、産業廃棄物収集運搬業許可の申請先は全国です。これまでに23都道府県で申請してきました。
- 「汚泥」「廃油」など、グリストラップ清掃に必要な品目を整理して申請します
- 取引先の店舗が東京・埼玉・千葉・神奈川などにまたがる場合も、必要な県を同時に申請します
- 県外の許可も、同じ窓口でお引き受けします
- 講習会の日程と申込方法もご案内します
報酬はこちらのページでご案内しています。
「今のやり方で大丈夫か」「次の契約に間に合うか」から、お気軽にご相談ください。
※本記事の内容は、執筆時点(2026年10月)の情報に基づいています。本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。廃棄物処理法の運用は自治体ごとに異なる場合があり、個別の判断は所管の自治体への確認が必要です。許可の取得や取得時期を保証するものではありません。
出典
- 東京都環境局 都民の声 対応事例(平成30年2月分):グリストラップ清掃汚泥の排出事業者
- 東京都環境局 排出事業者責任の徹底について(令和2年3月27日):委託した排出事業者の書類送検事例
- 川崎市 令和8年度給食室雑排水槽等清掃及び汚泥等運搬業務仕様書
- 那覇市 令和8年度グリーストラップ清掃・汚泥等収集運搬及び処分業務委託仕様書
- 守口市 業務仕様書(汚泥の収集運搬):入札参加申請時の許可証写しの提出
- 柏市 事業者のみなさまへ~事業系廃棄物とは~:グリストラップ汚泥の品目と野菜くずの扱い
- 板橋区 一般廃棄物収集運搬業の許可に関する基本方針
- 文京区 一般廃棄物処理業者の方へ:新規許可を令和3年度から実施しない方針

