利益は出ているのに、なぜ通帳残高が増えないのか|黒字倒産の入り口でよく見る構造

利益が出ているのにお金が残らない会社の特徴 資金繰り・財務改善

「決算書では黒字なのに、通帳の残高が増えていない」

私のところには、こうした違和感を抱える経営者の方からの相談が増えています。
特に、IT系の事業者で売上が伸びている時期に起きやすい現象です。

利益が出ているのにお金が残らない。
これは決算書の見方を変えるだけでは解決しません。
利益とキャッシュは別物、という前提から整理する必要があります。

私は行政書士として、補助金や融資の申請支援を通じて、多くの中小企業の資金繰りを見てきました。
税金や個別の会計処理は税理士の専門領域ですが、「黒字なのに資金繰りが苦しい」の構造的な原因については、経営者目線でお話できることがあります。

黒字なのに通帳が増えない、という違和感

「儲かっているはずなのに資金繰りが苦しい」の正体

決算書の利益と、実際の現金残高にはズレがあります。
このズレを生む構造はいくつかあって、ほとんどの場合、複数が組み合わさって起きています。

「節税対策をしたら、却って資金繰りが厳しくなった」
「売上が伸びているのに、月末の支払いに困る」

こういう声をよく聞きます。

利益とキャッシュは別物、という前提

会計上の「利益」と、財布の中の「現金」は別の概念です。
利益は売上から経費を引いたもの、現金は実際に出入りした金額です。

この違いを意識せずに経営判断をしていると、紙の上だけ儲かっているように見えて、現場が回らなくなります。

利益が出ているのにお金が残らない5つの構造

実務でよく見るパターンを挙げます。

1. 売上計上と入金タイミングのズレ

請求書を出した時点で売上は計上されますが、入金は1〜2か月後というケースが多いです。
売上が急に伸びると、入金が追いつかず、運転資金が不足します。

2. 在庫・仕掛品が現金を縛っている

材料を買って在庫として持っている分、現金は出ていきます。
売上が立つまでの間、その現金は戻ってきません。

製造業や受注開発のIT会社で起きやすい構造です。

3. 借入返済はPL(損益計算書)に出ない

借入金の返済(元金部分)は、損益計算書には経費として現れません。
利益は出ていても、返済で現金は減り続けます。

「黒字なのに資金繰りが厳しい」の典型例です。

4. 減価償却で「紙の利益」と現金がずれる

設備投資をした年、現金は一気に出ていきます。
ところが会計上は、減価償却で数年に分けて経費計上されます。

「投資した年の決算は赤字、翌年は黒字なのに資金が苦しい」という現象が起きます。

5. 節税のために使った金が戻ってこない

「税金を払うくらいなら経費にしよう」と支出を増やすと、税金は減りますが現金も減ります。
節税は資金繰りを良くする手段ではありません

ここを混同していると、節税のたびに資金繰りが苦しくなります。

つまずきやすい場面と兆候

売上が伸びているのに資金がショートする

成長期にいちばん危ないパターンです。
売上が増える → 仕入や人件費の先払いが増える → 入金は後回し → 資金ショート、という流れです。

決算書を見ても原因がわからない

決算書はあくまで過去の記録です。
未来の資金繰りは、別の表(キャッシュフロー計算書)を見ないと予測できません。

キャッシュフローを把握する第一歩

月次でキャッシュフロー計算書を見る習慣

年に1回の決算ではなく、毎月キャッシュフローを確認する習慣を作ります。
小さな会社なら、Excelでも十分です。

入金・出金サイクルを可視化する

「いつ、いくら入って、いくら出るか」を3か月先まで見えるようにすると、運転資金の予測が立てやすくなります。

資金繰り改善で行政書士ができること

個別の税額計算や会計処理は税理士の仕事ですが、資金調達の選択肢を広げるところは行政書士が支援できる領域です。

補助金活用で資金繰りを補完する

補助金は、要件に合えば返済不要の資金になります。
事業計画書の作り込みや、適切な制度の選定が成果を分けます。

融資申請書類の整備を支援する

融資を申し込む際の事業計画書・資金繰り表の作成を支援できます。
金融機関に説明しやすい形に整えることが、審査通過率に影響します。

よくある質問

Q. 税理士と行政書士の役割の違いは何ですか?

税理士は、税金の計算や申告・会計帳簿の作成が専門です。
行政書士は、補助金申請や融資申請書類など、行政手続きや事業計画の文書作成が専門です。

どちらかではなく、両方をうまく使い分けるのが現実的です。

Q. 補助金で資金繰りはどこまで助かりますか?

補助金は「設備投資や新規事業の費用」を後から補填する形が多いです。
即効性のある運転資金にはなりにくいですが、設備投資の現金流出を後から取り戻せます。

まとめ|数字を見える化することが改善の第一歩

「黒字なのに資金繰りが苦しい」は、決算書だけを見ていても解決しません。
利益とキャッシュは別物という前提で、月次のキャッシュフローを把握するところから始めると、構造的な原因が見えてきます。

補助金や融資の活用を含めて資金繰りを整理したい方は、一度ご相談ください。

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この記事の執筆者

行政書士 坂本倫朗(さかもと・みちろう)

坂本倫朗行政書士事務所 代表。東京都を拠点に、産業廃棄物収集運搬業許可・建設業許可・解体工事業登録・電気工事業者登録・一般貨物自動車運送事業など、各種許認可申請の支援を行っています。

また、補助金・融資支援を軸にした定額制サービス「Legal Base One」を運営し、IT・Web業界の中小企業や個人事業主に対し、契約書作成・利用規約作成・資金繰り改善・補助金支援など、財務と法務の両面から継続サポートを提供しています。

さらに、生成AIの活用支援を行う「生成AIアドバイザー」として、AI導入・プロンプト設計・AI契約条項の作成など、企業のAI活用を法務面からサポートしています。

行政書士登録番号:第17081604号
所属:東京都行政書士会
Webサイト:https://sakamoto316.tokyo/

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