固定費の見直しで業績が悪化する会社|削減順序を誤ったときに起きること

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「赤字が続いているので、固定費を削ろうと思います」
お客様からよく聞きます。

固定費の削減そのものは間違っていません。
ただし、削る順序を間違えると、業績がさらに悪化します。
これは、業種を問わず起きています。

私の領域は、会計や税務ではありません。
契約書・社内規程・許認可です。
ただし、契約書を点検していると、固定費の構造が見えることがあります。
そこで気づいたことを、ここで整理しておきます。

なお、税務判断・税額計算は税理士の領域です。
本記事では、その手前にある「順序」の話に絞ります。

固定費削減で逆効果になるパターン

「とりあえず広告から削る」が危ない理由

業績が悪化した会社で、最初に削られるのが広告費です。
理由はわかります。
広告費は、止めればすぐに支出が減ります。

ところが、広告で集客していた会社が広告を止めると、3か月後に売上が落ちます。
売上が落ちると、利益が落ちます。
固定費を削ったはずなのに、利益はさらに減る。

「すぐに止められる支出」は、「すぐに効果を失う支出」でもあることが多い。
ここを見ないで削ると、逆効果になります。

人件費を先に見直して現場が回らなくなる

次に削られるのが、人件費です。
退職者の補充をしない、業務委託の契約を打ち切る。

これも、削った瞬間は支出が減りますが、3か月後には現場が回らなくなる会社があります。
回らない現場では、残った人の負担が増え、品質が落ち、お客様からのクレームが増える。
結果として、売上が落ちます。

システム利用料をやめて業務が倒れる

クラウドサービス、業務システムの利用料。
「これくらいなら手作業でも回せる」と判断して、契約を解除する会社があります。

実際に手作業に戻してみると、想定していた数倍の時間がかかることがあります。
社員の労働時間が増え、別の人件費が膨らみ、結局はシステム利用料より高くつく。
このパターンも、よく見ます。

削減してはいけないコストの見分け方

収益を生んでいるコストを見分ける視点

固定費の中には、「払っているから収益が立っている」コストがあります。
広告費の一部、システム利用料の一部、人件費の一部。
これを削ると、コストは減りますが、それ以上に売上が落ちます。

見分けるためには、「このコストを止めたら、売上はどうなるか」を一つひとつ問う必要があります。
止めても売上が変わらないコストと、止めたら売上が落ちるコストは、まったく別ものです。

「ストック」と「フロー」を分けて見る

ストック型のコストは、止めてもしばらくは効果が残ります。
たとえば、過去に作ったウェブサイトの維持費。

フロー型のコストは、止めた瞬間に効果が消えます。
たとえば、リスティング広告の入札費用。

両方を「広告費」「システム費」と一括りにして見ていると、ストック側を残してフロー側だけを止める、といった細やかな調整ができません。

見直しの優先順位の考え方

効果が薄いまま残り続けているコストを見る

導入したけれど誰も使っていないシステム。
契約しているけれど読んでいないサブスクリプション。
過去に取った保険で、いまの事業に合っていないもの。

このあたりは、止めても何も起きません。
ここから先に手をつけるのが、安全な順序です。

契約を見直せば下がるコストを見る

同じサービスを使い続けながら、契約条件を見直すだけで下がる場合があります。
プランの見直し、年契約への切り替え、不要なオプションの解除。
ここは、サービスを止めるリスクなしに削れる場所です。

このあたりは、私の領域でも関わらせていただく場面があります。
契約書の文言を読み解いて、自社にとって不要な条項を整理する作業です。

複数部門で重複しているコストを見る

部門ごとに別々の業者と契約していて、合計すると重複が出ているコスト。
規模が大きくなるほど、ここで重複が積み上がっていることがあります。

「自社で何にいくら払っているか」の一覧を、一度全部書き出すだけで、見えてくるものがあります。

削減の前に「判断の原材料」を揃える

費目ごとの推移を見えるようにする

毎月、何にいくら払っているかを、費目ごとに並べる。
これだけのことですが、やっていない会社が意外と多い。

3か月、6か月、12か月の推移を並べると、増えているコストと減っているコストが見えてきます。
ここを見ずに削る順序を決めると、勘で動くことになります。

部門・事業部門ごとの負担を整理する

費目だけでなく、どの部門が、どの事業のために負担しているか。
ここを整理すると、収益との対応関係が見えてきます。

部門ごとの収益貢献と、部門ごとの固定費負担を並べる。
どこに重さがかかっているかが、はっきりします。

社外パートナーとの考え方

税理士・会計士との連携

税務・会計判断は、税理士・会計士の領域です。
固定費の見直しを進める段階では、月次のキャッシュフローを見ている専門家との相談が欠かせません。

私の立場から、税額計算や会計判断について助言することはありません。
ここは線引きを明確にしています。

行政書士の視点での契約点検

私が関われるのは、契約書・許認可・社内規程の側です。
「いま結んでいる契約に、不要な条項が紛れていないか」を点検する作業は、行政書士の業務に重なります。

契約の見直しで固定費が下がる場面では、お役に立てることがあります。

よくある質問

Q. 見直しはどの頻度でやるべきですか?

業種・規模により異なりますが、年に1回、契約更新の時期に合わせて点検する会社が多い印象です。
業績が変動しやすい時期は、半年に1回でも早すぎないと思います。

Q. 人件費を下げないと間に合わないときは?

人件費の見直しは、社労士の業務領域や労務管理の論点と重なります。
私の立場からは「最後に手をつけるべき」とお伝えすることが多いですが、最終的な判断は経営者の領域です。
税理士・社労士と相談しながら進めることをおすすめします。

Q. サブスクリプション型サービスはどう見るべきですか?

「使っているか/使っていないか」を、まず棚卸しする。
使っていないものは止める。
使っているもののうち、契約条件を見直せば下がるものを次に見る。
止めるかどうかは、その後の判断です。

Q. 複数の見直しを同時進行してよいですか?

同時に動かすと、何が効いて売上が落ちたか、何が効いて利益が戻ったかが、わからなくなります。
一つずつ順番に動かす方が、後から振り返れて、安全です。

まとめ

固定費の見直しは、削る順序が結果を分けます。
広告費・人件費・システム利用料を先に削ると、業績が悪化することがあります。

先に削れるのは、効果が薄いまま残り続けているコスト、契約を見直せば下がるコスト、重複しているコスト。
ここから順番に整理していくと、収益を落とさずに支出を減らせる場面が見えてきます。

契約書の点検で関われる場面があれば、お手伝いさせていただきます。
税務・会計は税理士・会計士、人事・労務は社労士の領域ですので、必要に応じて専門家と分担しながら進める形になります。

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この記事の執筆者

行政書士 坂本倫朗(さかもと・みちろう)

坂本倫朗行政書士事務所 代表。東京都を拠点に、産業廃棄物収集運搬業許可・建設業許可・解体工事業登録・電気工事業者登録・一般貨物自動車運送事業など、各種許認可申請の支援を行っています。

また、補助金・融資支援を軸にした定額制サービス「Legal Base One」を運営し、IT・Web業界の中小企業や個人事業主に対し、契約書作成・利用規約作成・資金繰り改善・補助金支援など、財務と法務の両面から継続サポートを提供しています。

さらに、生成AIの活用支援を行う「生成AIアドバイザー」として、AI導入・プロンプト設計・AI契約条項の作成など、企業のAI活用を法務面からサポートしています。

行政書士登録番号:第17081604号
所属:東京都行政書士会
Webサイト:https://sakamoto316.tokyo/

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