エアコン洗浄の汚水を持ち帰る業者は、産廃の「無許可運搬」に問われる場合があります

業務用エアコンの洗浄作業で出た汚水を、会社に持ち帰って処理している事業者は少なくありません。

しかしこの汚水は、法律上は「産業廃棄物」です。しかも、契約の形によっては「お客様の廃棄物」と扱われます。その場合、許可なく運べば無許可の収集運搬にあたり、運搬を任せたお客様や元請の側も、責任を問われる可能性があります。

この記事では、エアコンクリーニング・空調メンテナンス業者の方に向けて、汚水の扱いと産業廃棄物収集運搬業許可の要否を整理します。

1. 洗浄後の汚水は「産業廃棄物」です

エアコン洗浄の汚水は、事業活動から出る液状・泥状の不要物なので、産業廃棄物にあたります。中身によって、次の品目が混ざった「混合物」として扱われるのが一般的です。

汚水の中身該当する品目の例
カビ・ホコリなどが沈んだ泥状の汚れ汚泥
アルカリ性洗剤を含む液廃アルカリ
酸性洗剤を含む液、中性の液廃酸(中性は廃酸と廃アルカリの混合物とする扱いがあります)
厨房など油汚れの多い現場の液廃油

※産業廃棄物の「品目」=法律で決められた20種類の分類。許可は品目ごとに取ります。

注意したいのは、強い洗剤を使う現場です。pH12.5以上のアルカリ性廃液、pH2.0以下の酸性廃液は「特別管理産業廃棄物」になり、通常の許可とは別の許可が必要です(廃棄物処理法施行令第2条の4)。洗剤の成分表(SDS)と、汚水のpHを一度確認しておくと安心です。

2. 許可の要否は「その汚水が誰の廃棄物か」で決まります

廃棄物処理法では、自分の会社の廃棄物を自分で運ぶなら許可は不要です。一方で、他人の廃棄物を運ぶことを仕事として行うなら、都道府県知事の許可が必要です(廃棄物処理法第14条第1項)。

つまり、ポイントは「洗浄の汚水は、作業した業者の廃棄物なのか、お客様の廃棄物なのか」です。この廃棄物の責任者を「排出事業者」といいます。

※排出事業者=その廃棄物を出した者として、最後まで適正に処理する責任を負う事業者。

実はこの線引きは、作業の性質と契約の内容で変わります。大阪府が公表している排出事業者向けFAQでは、次のような考え方が示されています。

  • 建設工事にあたる作業(エアコンの入替工事など):排出事業者は工事の元請業者
  • 建設工事にあたらないメンテナンス:部品や廃油などは、メンテナンス業者・設備の所有者(管理者)のどちらも排出事業者になり得る。契約で責任の所在と費用負担を決めておくことが望ましい
  • 清掃業務:清掃業者は、もともとあった汚れを集めただけと考え、清掃を依頼した側が排出事業者になる

エアコン洗浄は「清掃」の性格が強い作業です。この考え方に当てはめると、汚水は「お客様の廃棄物」と判断される可能性があります。その汚水を業者が運べば、他人の廃棄物の運搬、つまり許可が必要な行為になります。

なお、廃棄物処理法の解釈は自治体ごとに運用が異なることがあります。東京都はさらに明確で、飲食店のグリストラップ清掃について「メンテナンス業者や清掃業者が排出事業者となることはできない」と回答しています。神奈川県・埼玉県・千葉県での扱いは、各自治体への確認が必要です。

3. 許可が必要になりやすいケース・不要と整理できるケース

ケース許可の考え方
契約で「汚水の処理はお客様(または元請)の責任」と定めているお客様等の廃棄物を運ぶことになるため、許可が必要になりやすい
元請・管理会社から、許可業者として運搬するよう求められている取引先が「業者に委託して運ばせる」形を前提にしているため、許可が必要
契約で「汚水は清掃業者が自社の廃棄物として処理する」と決めている東京都は、清掃で出た汚れは設備を置いている側の廃棄物であり、清掃業者は排出事業者になれないとしている。契約書の書き方で許可を不要にすることはできない可能性が高い
汚水を業者が持ち出さず、お客様自身が自社の責任で処理する運搬自体がないため、収集運搬業許可の問題は生じない

また、汚水を水で薄めて排水口に流す行為は、処理をしたことになりません。大阪府のFAQでは、ビルメンテナンスで出る剥離廃液を未処理や希釈のみで放流すると、不法投棄にあたる場合があるとしています。

4. 無許可で運んだ場合のリスクは、業者だけにとどまりません

許可を受けずに産業廃棄物の収集運搬を業として行うと、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります(廃棄物処理法第25条第1項第1号、2025年6月1日施行の刑法改正後の表記)。

さらに、無許可の業者に運搬を任せた排出事業者の側も、委託基準違反として同じ条文の罰則の対象になります(同項第6号)。

このため、コンプライアンスを重視する元請や管理会社ほど、協力会社に許可の取得を求める傾向があります。許可の有無は、取引を続けられるかどうかに直結する問題になりつつあります。

※罰則の適用は個別の事情によります。過去の汚水の扱いに不安がある場合は、弁護士にご相談ください。

5. 許可を取るなら、申請前にこの4点を決めておきます

  1. 品目を最初にまとめて決める
    • 汚泥・廃酸・廃アルカリを基本に、厨房系の現場があれば廃油も入れます。
    • 品目を後から追加すると「変更許可」の手続きが必要になり、手間と費用が増えます。
  2. 特別管理産業廃棄物にあたらないか確認する
    • 洗剤のSDSと汚水のpHを確認し、必要なら特別管理産業廃棄物の許可も検討します。
  3. 処分先(中間処理業者)を確保する
    • 液状の廃棄物は、中和などの処理ができる業者でなければ受け入れられません。
    • 申請する品目は、処分先が受け入れられる品目とそろえます。
  4. 積み込む都道府県をすべて洗い出す
    • 許可は、廃棄物を積み込む場所(お客様の現場)と降ろす場所がある都道府県ごとに必要です。
    • 現場が1都3県にまたがるなら、それぞれの都県で申請します。

このほか、液体を漏らさない密閉容器での運搬体制や、日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)の講習会の修了が必要です。

6. 「うちは許可が必要?」の判断からご相談ください

坂本倫朗行政書士事務所では、エアコンクリーニング・空調メンテナンス業者の方の産業廃棄物収集運搬業許可について、次の段階からサポートしています。

  • 現在の契約・作業内容から、許可が必要かどうかの整理
  • 必要な品目・都道府県の洗い出し
  • 1都3県をはじめ、複数都道府県の同時申請

許可が不要と整理できる場合は、その旨をお伝えします。

報酬はこちらのページでご案内しています。

お問い合わせはこちら

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。廃棄物処理法の運用は自治体ごとに異なる場合があり、個別の判断は所管の自治体に確認が必要です。許可の取得を保証するものではありません。

出典

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この記事の執筆者

行政書士 坂本倫朗(さかもと・みちろう)

坂本倫朗行政書士事務所代表。産業廃棄物収集運搬業許可をはじめとする許認可申請、IT・Web事業者向けの契約書・利用規約の作成、補助金・融資支援を行っています。
また、経営者とそのご家族を中心とした相続手続・生前対策に対応しています。
IT分野での実務経験を生かし、生成AIを業務で活用するための仕組みづくりや、契約・責任・業務ルールの整備にも取り組んでいます。

行政書士登録番号:第17081604号
所属:東京都行政書士会
認定経営革新等支援機関(109813007514)
Webサイト:https://sakamoto316.tokyo/

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