効率化が進まない会社で先に削るのはツールではなく、ささいなコミュニケーションの摩擦

効率化が進まない会社で先に削るのはツールではなく、ささいなコミュニケーションの摩擦 業務効率化・生成AI
効率化が進まない会社で先に削るのはツールではなく、ささいなコミュニケーションの摩擦

「効率化のためにツールを入れたんですが、全然変わらないんです」
お客様からよく聞きます。

ツールが悪いわけではありません。
ツールが効くための土台が、整っていないだけです。

土台で何が起きているかと言えば、「ささいなコミュニケーションの摩擦」が積み上がっています。
一回一回は本当にささいなのに、積もると重い。
先に削るべきは、ツールではなく、ここです。

ツール導入では消えないコスト

「あれってどうなってましたっけ?」が何度も飛ぶ

社内で同じ質問が、何度も飛び交っている会社があります。
昨日もそういう質問が飛んでいたな、と思いながら答えている社員。
答える時間より、思い出すまでの時間の方が重い。

これは、情報の置き場所が決まっていないか、決まっていても探しづらいから起きます。
ツールを入れる前に、情報の置き場所を一つに集約するだけで、かなり減ります。

同じ説明を場所を変えて繰り返している

同じ社員が、メールで説明し、チャットで説明し、会議でも説明している。
受け手が違うようでいて、実は同じ人が複数回受けていることもあります。

「あの件、結局どこに書いてあるんでしたっけ?」が、これに当たります。
書いてあるのです。
書いてあるけれど、探せない。
だから、毎回口頭で説明している。

相手の手が空くのを待っている時間

誰かに判断を求めて、その人の手が空くまで待っている時間。
これは、会社のあらゆる場所で発生しています。

「社長が空くのを待っている」「経理担当者が戻ってくるのを待っている」「現場責任者が打ち合わせから帰ってくるのを待っている」。
この待ち時間を、生産性の数字で測ることはあまりありませんが、合計すると相当な時間が消えています。

摩擦が積み上がる典型パターン

情報の置き場所が複数ある

クラウドに置いてあるファイル、共有フォルダにあるファイル、メールに添付されたファイル、紙のファイル。
同じ書類が、複数の場所に分散している会社で、特に起きます。

「最新版はどれですか?」が、毎週飛び交っている状態。
ここを整理せずにツールを入れても、置き場所が一つ増えるだけです。

判断の基準が人によって違う

同じ質問でも、Aさんに聞いた答えと、Bさんに聞いた答えが違う。
それぞれが正しい根拠を持っているわけではなく、それぞれが過去の経験から答えているだけ。

この状態だと、社員はどちらの答えを信じればよいかわからなくなります。
結果として、毎回確認に行きます。
判断の基準を、A4半ページでも書き残しておくだけで、摩擦は減ります。

「とりあえず聞く」が標準動作になっている

考える前に、まず聞く。
これが標準動作になっている会社では、聞く側も答える側も、お互いの時間を削り合っています。

聞かれた側は、毎回同じ説明を繰り返す。
聞く側は、自分で調べる習慣がなくなる。
両方が時間を失っています。

摩擦を生んでいる現場の具体例

チャットで投げて、メールでも投げて、電話もかける

同じ依頼を、三つのチャネルで送っている社員がいます。
本人は「確実に伝えたい」と思っているのですが、受け手は同じ依頼が三回来ます。

受け手は、どのチャネルで返事をすればよいかも迷います。
チャネルが多いほど、摩擦は増えます。

会議で決めたことが翌週には別解釈になる

会議で決まったこと。
議事録に書いてあるけれど、誰も読み返さない。
だから、翌週には「あれって、こういう話じゃなかったでしたっけ?」が始まります。

決まったことを、決まった場所に、決まった形で残す。
ここがゆるいと、毎回ゼロから話し合いをやり直すことになります。

「念のため共有」の連鎖で受信箱が埋まる

念のため、と思って関係者全員にCcで送る。
受け取った側は、自分には関係ないと思いながら、念のため目を通す。
そして、自分も念のため、別の人にCcで送る。

ここに「自分宛てではない情報を見る時間」が、毎日積み上がります。

先に削れる「ささいな摩擦」

情報の置き場所を一つに集約する

クラウドのどこに、何を、どういう構造で置くか。
ここを決めて、そこ以外には置かない、という運用を徹底するだけで、相当な摩擦が消えます。

決めるだけでは続きません。
古い場所にあるものを、新しい場所に動かす作業を、誰かが担当する必要があります。
ここを誰の仕事にするかが、続くかどうかの分かれ目です。

判断基準を一行で書き残す

「この場合はどうする」を、その都度A4一枚の紙にメモしておく。
半年後に振り返ると、社内の判断基準が、誰でも読める形で残っています。

きれいなマニュアルにする必要はありません。
書きながら直していく方が、続きます。

「聞かなくていい状態」を作る

聞かなくても答えがある状態を作っておく。
よくある質問への答えを、決まった場所に貼っておく。
新しい質問が来たら、答えと一緒にそこに追加していく。

これだけで、同じ質問が二回目以降は飛んでこなくなります。

ツール導入を活かすための土台

ツールが効くのは摩擦を減らした後

情報の置き場所が決まっていない会社にチャットツールを入れると、置き場所がさらに増えます。
判断の基準が散らかっている会社にCRMを入れると、CRMの中で基準が散らかります。

ツールは、整った場所に入れて初めて効きます。
順番が逆になると、混乱を増やすことになります。

導入前に決めておきたい運用ルール

何のために入れるのか。
誰が、何を、どう入力するのか。
入力されない場合、どうするのか。

このあたりを決めずに導入すると、半年後には誰も入力しなくなります。

定着しなかったときの撤退ライン

すべてのツールが続くわけではありません。
「3か月使って、こういう状態にならなければ撤退する」というラインを、最初に決めておく。
撤退できない状態で続けるよりも、決めたラインで止める方が、結果的に時間が浮きます。

判断を整えるという視点で行政書士ができること

社内ルール・規程の文書化

「決まっているけれど書かれていない」状態を、書かれている状態にする作業は、行政書士の領域に重なります。
規程・運用ルール・契約書の整備を、現場の動きと合わせて整理することができます。

判断の根拠を残す仕組みづくり

許認可や届出を扱う仕事は、判断の根拠を残す習慣そのものです。
ここで培われた感覚は、社内の運用ルール整備にも応用できます。

行政書士の関わり方は、ツール選定ではなく、判断の枠組みを整える方向です。

よくある質問

Q. 何から手をつければよいですか?

「同じ質問が何度も飛ぶ場所」を一つだけ選んで、答えを文書化することから始めるのがおすすめです。
小さく始めて、効果を見てから広げる方が、続きます。

Q. ツール導入はそもそも要らないのですか?

要らないわけではありません。
摩擦を減らした後にツールを入れる方が、効きやすい、ということです。
順番の話です。

Q. 社員が反発しないですか?

「この場所に置く」だけを決めると反発はあまり出ません。
細かいルールを一気に増やすと反発が出ます。
変える量を絞ることが、続けるコツです。

Q. 効果はどのくらいで出ますか?

ケースによって異なりますが、情報の置き場所を一つに集約するだけでも、1か月くらいで「探す時間が減った」という感触が出てくることが多いです。

まとめ

効率化が進まない会社で先に削るべきは、ツールではありません。
ツールの前段で起きている、ささいなコミュニケーションの摩擦。
ここを一つずつ畳んでいく方が、結果的にツールも効きます。

社内ルール・運用ルール・契約書まわりで「決まっているけれど書かれていない」状態が残っているなら、整理のお手伝いができる場面があります。

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この記事の執筆者

行政書士 坂本倫朗(さかもと・みちろう)

坂本倫朗行政書士事務所 代表。東京都を拠点に、産業廃棄物収集運搬業許可・建設業許可・解体工事業登録・電気工事業者登録・一般貨物自動車運送事業など、各種許認可申請の支援を行っています。

また、補助金・融資支援を軸にした定額制サービス「Legal Base One」を運営し、IT・Web業界の中小企業や個人事業主に対し、契約書作成・利用規約作成・資金繰り改善・補助金支援など、財務と法務の両面から継続サポートを提供しています。

さらに、生成AIの活用支援を行う「生成AIアドバイザー」として、AI導入・プロンプト設計・AI契約条項の作成など、企業のAI活用を法務面からサポートしています。

行政書士登録番号:第17081604号
所属:東京都行政書士会
Webサイト:https://sakamoto316.tokyo/

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