建設業許可を取得していた父親が突然亡くなった。
息子は以前から一緒に現場で働いており、これからも建設業を続けたいと考えている。
しかし、父親名義の建設業許可はどうなるのでしょうか。
進行中の工事や新しく受注した工事は、予定どおり進めてよいのでしょうか。
また、事業を引き継ぐとすれば、父親の借入金や個人財産、相続の手続きはどうすればよいのでしょうか。
こうした場合、建設業許可の相続手続きには短い期限があるため、早急な確認が必要です。
ただし、許可の手続きだけを考えればよいわけではありません。
今回は、建設業を営む個人事業主が亡くなった場合に、ご家族が最初に確認したいことを、順番に整理します。
1. まず確認したいのは、死亡日と建設業許可の内容
個人事業主が取得していた建設業許可は、単に名義を息子へ変更すれば引き継げるものではありません。
建設業法第17条の3には、相続による許可の承継認可制度があります。
相続人が亡くなった方の建設業の全部を引き続き営もうとする場合、死亡後30日以内に相続認可を申請する必要があります。
例えば、父親が亡くなってからすでに20日経過している場合、申請期限まで残り10日しかありません。
しかも、申請するには相続人の同意や、承継する方の許可要件に関する確認も必要になります。
そのため、次の事項をできるだけ早く確認してください。
- 父親が亡くなった日
- 建設業許可の許可番号
- 許可を受けていた都道府県・行政庁
- 一般建設業か特定建設業か
- 許可業種と有効期間
- 建設業を引き継ぐ予定の方
許可通知書や申請書の控えが見つかれば、確認が進めやすくなります。
ただし、書類が見つからないからといって、相談を諦める必要はありません。
許可情報は国土交通省の建設業者検索システムや、許可行政庁への照会で確認できる場合があります。
書類を探し続けて30日の期限を過ぎてしまわないよう、まずは許可行政庁または建設業許可を扱う行政書士へ相談することが大切です。
2. 次に、進行中・着工予定の工事を確認する
許認可の確認と同時に、現在の工事についても整理する必要があります。
例えば、次のようなケースです。
- 父親の名義で請け負い、現在施工中の工事がある
- 来週から着工する予定の工事がある
- 見積書を提出し、契約締結を予定している工事がある
- 元請会社から工事継続の可否を確認されている
ここで必要なのは、工事の内容、請負金額、契約名義、着工日などの確認です。
建設業法では、適法に相続認可を申請した場合、認可または不認可の通知があるまで、相続人が許可を受けたものとみなす規定があります。
しかし、許可の取扱いと、亡くなった父親が締結した工事契約の承継は、別に確認する必要があります。
また、認可申請前であっても工事の状況によって検討すべき事項が異なります。
「父親の許可があったのだから、そのまま工事を続けて大丈夫」と自己判断せず、許可行政庁と契約関係を確認してください。
3. 誰が相続人で、誰が事業を引き継ぐのかを確認する
建設業許可の相続認可では、事業を引き継ぐ方が誰なのかを明確にする必要があります。
例えば、相続人が母親、長男、長女の3人で、長男が事業を引き継ぎたいと考えている場合です。
相続人が複数いるときは、亡くなった方の建設業の全部を承継する相続人について、原則として相続人全員の同意が必要です。
そのため、次の確認を進めます。
- 戸籍等による相続人の確認
- 遺言書の有無
- 誰が事業を引き継ぐ予定なのか
- 他の相続人の意向
- 事業を引き継ぐ方の建設業許可要件
例えば、長男が父親と10年間一緒に現場で働いていたとしても、それだけで建設業許可に必要なすべての要件を満たすとは限りません。
経営業務の管理体制に関する経験や、営業所技術者等の資格・実務経験を確認する必要があります。
なお、建設業を引き継ぐことについて家族で話がまとまっていても、遺産全体をどのように相続するかは別の問題です。
4. 建設業の許可と並行して、財産・借入金も確認する
ここは見落としたくない部分です。
個人事業主の場合、事業で使用していた財産が父親個人の所有になっていることがあります。
例えば、建設機械、車両、工具、資材置場の土地、営業所として使用していた建物などです。
また、借入金、未払金、個人保証などが残っている可能性もあります。
したがって、事業を引き継ぐかどうかを考える際には、建設業許可だけでなく、父親個人の財産と負債を確認する必要があります。
特に注意したいのは、事業用の財産や負債だけではないということです。
父親の自宅、預貯金、住宅ローン、事業とは関係のない借入金や保証債務なども、相続の判断に関係します。
ただし、最初からすべての不動産を正確に評価したり、すべての金融機関を調査したりする必要があるとは限りません。
まずは手元にある資料から、どのような資産や負債が存在するのかを確認します。
相続するかどうかを迷っている場合や、借入金・保証債務の全体像が分からない場合には、早急に弁護士等の専門家へ相談することをお勧めします。
5. 最初に探しておきたい書類
ご家族が建設業許可や相続について相談する際には、次の資料があると状況を整理しやすくなります。
建設業に関する書類
- 建設業許可通知書
- 建設業許可申請書の副本、変更届の控え
- 現在の工事契約書、見積書、工事台帳
事業の財産・負債に関する書類
- 父親の直近の確定申告書、青色申告決算書
- 借入金の契約書、返済予定表
- 事業用預金の通帳、帳簿類
- 建設機械や車両、不動産に関する資料
相続に関する書類
- 戸籍等の相続人を確認できる資料
- 遺言書(ある場合)
- 固定資産税の課税明細書
- 個人の預貯金や住宅ローン、保証債務に関する資料
これらは、相談時点で必ずすべて提出しなければならないという意味ではありません。
特に、亡くなった方の許可申請書副本や確定申告書が見つからないこともあるでしょう。
すべての書類がそろっていなくても、まずは相談してください。
許可行政庁への照会や、利用できる資料の確認によって進められる部分もあります。
6. 建設業の相続には、ほかにも期限がある
建設業許可の相続認可だけでなく、相続に関する期限にも注意する必要があります。
| 手続き | 主な期限 |
|---|---|
| 建設業許可の相続認可申請 | 死亡後30日以内 |
| 相続放棄・限定承認 | 原則として相続開始を知った時から3か月以内 |
| 所得税の準確定申告 | 相続開始を知った日の翌日から4か月以内 |
| 相続税の申告・納税 | 必要な場合、原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内 |
相続税は必ず発生するわけではありませんが、事業用資産に加えて父親個人の財産も含め、申告の要否を確認する必要があります。
また、相続に関する判断が難しい場合には、相続放棄等の熟慮期間の伸長を家庭裁判所へ申し立てる制度もあります。
建設業許可の30日の期限とは別に、これらの手続きを管理することが大切です。
7. 最初からすべてを解決しようとせず、優先順位を決める
ここまでの内容を整理すると、建設業の個人事業主が亡くなった場合、最初に進めたいことは次のとおりです。
- 死亡日と建設業許可の内容を確認する
- 進行中・着工予定の工事を確認する
- 相続人と事業を引き継ぐ方を確認する
- 父親の事業用・個人用の財産と負債の概況を確認する
- 許可行政庁へ相談し、相続認可の申請準備を進める
- 必要に応じて税理士、司法書士、弁護士等と相続手続きを進める
この順番は、前の項目がすべて終わるまで次に進めないという意味ではありません。
特に建設業許可には30日の期限があるため、許認可の確認と相続財産・負債の確認を並行して進める必要があります。
8. 建設業許可の相続認可・相続手続きをご相談いただけます
坂本倫朗行政書士事務所では、建設業を営んでいた個人事業主が亡くなった場合の、建設業許可の相続認可申請に関するご相談を承っています。
許可の状況、必要な申請、相続人や承継者の要件、工事の予定などを確認し、行政書士として対応できる手続きについてご案内します。
また、相続人調査、争いのない遺産分割協議書の作成など、別途必要となる業務にも対応しています。
税務、相続登記、債務や相続放棄に関する法律判断などは、必要に応じて他の専門家と連携します。
報酬については、必要な手続きや資料の状況によって異なるため、業務内容を確認したうえでお見積りします。
突然のことで書類が見つからない場合でも、まずは状況をお知らせください。
建設業許可の相続認可には死亡後30日以内の申請期限があります。できるだけ早くご相談ください。
詳しくは「親族・従業員への事業承継支援」のページをご覧ください。
坂本倫朗行政書士事務所は、東京都板橋区にある行政書士事務所です。
建設業許可の相続認可申請をはじめ、個人事業主の死亡に伴う許認可・相続手続きについてご相談を承っています。
書類がすべてそろっていなくても、まずは状況をお知らせください。必要な手続きと対応の優先順位を整理し、お見積りをご案内します。

