「息子に会社を引き継がせる前に、古くなった設備を更新しておきたい」
「後継者が新しい事業に取り組みたいと言っているが、資金が足りない」
事業承継を考える経営者にとって、設備投資や資金調達は大きな課題の一つです。
長年会社を経営してきた現経営者と、これから会社を担う後継者では、必要だと考える設備や投資の優先順位が異なることもあります。
こうした事業承継前後の設備投資には、国の補助金や政策金融などを活用できる可能性があります。
今回は、親族や従業員への事業承継を予定している中小企業向けに、活用を検討したい制度と、その際の注意点を解説します。
1. 事業承継は、設備投資を考える機会でもある
会社を引き継ぐ際、設備について次のような問題が見つかることがあります。
- 製造設備が老朽化し、修理費用が増えている
- 古い機械を使っているため、生産性が上がらない
- 営業車両や事業用設備の更新が必要になっている
- 人手不足に対応するため、省力化設備を導入したい
- 新しい経営者のもとで、事業を拡大したい
これらをすべて承継後に解決しようとすると、後継者の資金負担が大きくなる可能性があります。
一方、現経営者の代ですべての設備を更新すればよいとも限りません。
後継者が考える経営方針によって、必要な設備や投資の時期が変わるからです。
そこで、現経営者と後継者が一緒に、今後必要となる設備投資と資金調達について検討しておくことが大切です。
2. 事業承継・M&A補助金の「事業承継促進枠」
事業承継に伴う設備投資で、検討したい制度の一つが「事業承継・M&A補助金」です。
2026年の第16次公募では、親族内承継・従業員承継を予定する事業者を対象とする「事業承継促進枠」が設けられています。
対象となるのは、5年以内に親族内承継または従業員承継を予定している中小企業者等で、一定の要件を満たす設備投資などです。
主な条件は次のとおりです。
- 補助率:原則2分の1、小規模事業者等は3分の2
- 補助上限:800万円(一定の賃上げ要件を満たす場合は1,000万円)
- 主な対象経費:設備投資費用、店舗・事務所の改築工事費用など
例えば、後継者の経営方針に合わせて生産設備を更新し、生産性の向上を目指すような取組みが考えられます。
ただし、事業承継を予定しているという理由だけで補助金を利用できるわけではありません。
承継の時期、設備投資の内容、生産性向上の計画など、個別の公募要件を満たす必要があります。
2026年第16次公募の受付期間は、10月2日から11月6日17時までです。
最新の公募要領については、事業承継・M&A補助金の公式サイトをご確認ください。
3. 事業承継に利用できる融資制度もある
補助金だけでなく、事業承継に関連した融資制度も検討できます。
日本政策金融公庫には「事業承継・集約・活性化支援資金」があります。
この制度は、一定の事業承継計画に基づいて事業承継を進める事業者や、事業承継を契機として新たな取組みを行う事業者などを対象としています。
対象となる条件によっては、事業承継計画を実施するための設備資金や運転資金などに利用できます。
例えば、次のような資金需要が考えられます。
- 後継者が取り組む新事業の設備資金
- 事業承継計画に基づく設備更新費用
- 承継後の事業展開に必要な運転資金
- 一定の条件を満たす株式や事業用資産の取得資金
融資の対象者、限度額、返済期間、利率などは事業の規模や申込内容によって異なります。
また、融資には審査があり、希望どおりの資金調達ができるとは限りません。
4. 補助金と融資、どちらを利用するべきか
補助金と融資には、大きな違いがあります。
補助金は原則として返済が不要ですが、審査があり、対象経費や実施時期などに条件があります。また、多くの制度では、経費を支払った後に補助金を受け取る仕組みです。
一方、融資は返済が必要ですが、設備投資に必要な資金を調達する方法として検討できます。
例えば、設備投資に1,000万円が必要で、補助金の対象になる見込みがある場合でも、購入代金を支払う資金をどのように確保するか考えなければなりません。
補助金の採択を受けた場合でも、交付決定前の契約・発注等が対象外になる制度があります。
そのため、設備投資の内容だけでなく、購入時期や支払いの時期、資金繰りを含めて計画することが重要です。
補助金と融資を組み合わせる場合も、それぞれの制度の条件を確認する必要があります。
5. 設備投資の前に、後継者と確認したいこと
設備投資を検討する際は、少なくとも次の事項を整理しておきたいところです。
何のために投資するのか
老朽化した設備を更新するのか、生産性を高めるのか、新しい事業に取り組むのかによって、必要な計画は異なります。
誰が投資を実行するのか
現経営者のもとで投資するのか、後継者への承継後に行うのかを確認します。
どのくらいの資金が必要なのか
設備代金だけでなく、設置工事費、教育費、運転資金への影響なども考慮します。
投資後の売上や利益はどう変わるのか
設備を導入することが目的ではありません。投資によってどのような効果が得られるかを検討することが重要です。
事業承継の時期との整合性はあるか
補助金によっては、事業承継の時期や承継後の事業継続について条件が設けられています。
投資計画と事業承継のスケジュールは、合わせて検討する必要があります。
6. 後継者の設備投資・資金調達を支援します
坂本倫朗行政書士事務所では、行政書士・認定経営革新等支援機関として、事業承継前後の設備投資や資金調達について支援しています。
具体的には、設備投資の内容を伺い、活用可能な補助金や融資制度の検討、事業計画・資金計画の作成支援、対応可能な申請支援を行います。
親族内承継や従業員承継を予定している会社だけでなく、承継後に新しい設備投資を考えている後継者からのご相談にも対応しています。
報酬は、利用する制度と支援内容に応じてお見積りします。
補助金の採択や融資の実行を保証するものではありません。
事業承継全体のコンサルティングを依頼するのではなく、設備投資や資金調達についての個別のご依頼も承っています。
詳しくは、当事務所の「親族・従業員への事業承継支援」をご覧ください。


