「そろそろ息子に会社を任せたい」
「長年働いてくれた従業員に事業を引き継いでもらいたい」
このような事業承継を考える際、建設業や宅建業、運送業など、許認可が必要な事業では注意しておきたいことがあります。
それは、経営者や事業の引継ぎによって、現在の許認可がどうなるのかという問題です。
代表者を変更するだけで対応できる場合もあれば、事業承継に伴う認可や、新たな許可・免許の取得が必要になる場合もあります。
今回は、建設業、宅地建物取引業、一般貨物自動車運送事業、産業廃棄物収集運搬業の4業種について、事業承継時に確認したいポイントを解説します。
1. まず「代表者の交代」と「事業そのものの承継」を区別する
許認可の引継ぎを考えるうえで、最初に確認したいのは、どのような方法で事業を引き継ぐのかということです。
例えば、父親が代表取締役を務める株式会社について、息子が新しい代表取締役になる場合です。
この場合、会社自体は同じ法人として存続するため、代表者等の変更手続きで対応できることがあります。
一方、父親が個人事業主として営んでいた事業を息子に引き継がせる場合や、別の法人へ事業を譲渡する場合は事情が異なります。
許認可の種類によっては、承継認可や新規許可が必要となります。
また、同じ法人が存続する場合でも、許可要件を満たす役員や技術者などが退職すれば、事業を継続するうえで問題が生じることがあります。
2. 建設業許可の事業承継
建設業許可には、事業譲渡、合併、分割、相続による承継の認可制度があります。
一定の要件を満たし、必要な認可を受けることで、建設業者としての地位を承継することができます。
一方、同じ法人で代表取締役が父親から息子に交代するだけなら、通常は事業承継認可ではなく、役員等の変更届などで対応します。
ただし、注意したいのが、常勤役員等や営業所技術者等の要件です。
例えば、父親が経営業務の管理体制に関する要件を満たす役員であり、引退に伴って退任する場合、後任者を含めた経営管理体制が引き続き許可要件を満たすか確認しなければなりません。
また、営業所技術者等が退職する場合も、後任者の資格や実務経験の確認が必要となります。
代表者を交代すること自体は難しくなくても、その後の許可要件を維持できるかが重要です。
建設業許可の新規取得や変更届については、建設業許可申請のページでもご案内しています。
3. 宅建業免許の事業承継
宅地建物取引業でも、事業の承継方法によって対応が変わります。
例えば、宅建業免許を取得している株式会社について、父親から息子へ代表取締役を交代する場合、法人自体は変わらないため、原則として代表者等の変更届で対応します。
その際、専任の宅地建物取引士の設置状況や、事務所の体制なども確認する必要があります。
一方、個人で取得している宅建業免許を子どもに引き継がせたり、別法人に事業を譲渡したりする場合には、免許をそのまま移すことはできません。
新たに事業を営む者が宅建業免許を取得する必要があります。
宅建業の場合は、免許だけでなく、営業保証金や保証協会への加入なども関係するため、事業の切替時期を含めた準備が大切です。
4. 一般貨物自動車運送事業の事業承継
一般貨物自動車運送事業では、事業の譲渡譲受、法人の合併・分割、相続について、認可制度が設けられています。
例えば、個人事業主として運送業を営む父親から息子へ事業を譲渡する場合、必要な認可を受けることで、運送事業に関する権利義務を承継する仕組みがあります。
ただし、認可を受けるためには、承継する側が所定の基準に適合している必要があります。
また、運送事業では、営業所や車庫、車両、運行管理者、整備管理者など、事業を継続するための体制を確認する必要があります。
一般貨物の許可を持つ法人がそのまま存続し、代表者のみを変更する場合は、通常、事業の譲渡譲受認可とは別の変更手続きになります。
事業譲渡などを行う場合には、認可に必要な期間を考慮して、早い段階から準備することが重要です。
5. 産業廃棄物収集運搬業許可の事業承継
産業廃棄物収集運搬業の許可についても、承継方法によって必要な対応が異なります。
同じ法人が存続し、代表者や役員を変更する場合には、必要な変更届を提出することになります。
一方、別の法人へ収集運搬事業を譲渡する場合、譲受人が従前の法人の許可をそのまま使用することはできません。
事業を引き継ぐ法人が、新たに必要な許可を取得することになります。
また、産業廃棄物収集運搬業では、積込み・荷下ろしを行う地域に応じて複数の都道府県等の許可を取得している場合があります。
そのため、事業を別法人へ移す際には、どの自治体で新規許可が必要になるのかを確認し、事業に空白期間が生じないように準備することが大切です。
産業廃棄物収集運搬業許可の取得・変更については、産廃収集運搬業許可申請の専用ページでご案内しています。
6. 事業承継の前に確認しておきたいこと
許認可が必要な事業を子どもや従業員に引き継ぐ場合、少なくとも次の点は確認しておきたいところです。
- 法人の代表者交代なのか、個人事業・法人間の事業譲渡なのか
- 現在、どの許認可を取得しているか
- 許認可の有効期限はいつか
- 許可要件を満たしている役員や技術者等は誰か
- 現在の経営者が退任しても許可要件を維持できるか
- 変更届、承継認可、新規許可のどれが必要か
- 希望する承継日までに手続きを終えられるか
事業承継の方法を決めてから許認可の問題に気づくと、予定していた時期に事業を引き継げなくなるおそれがあります。
特に、現在の経営者が許可要件を満たすために欠かせない存在となっている場合は、後継者への引継ぎ方法を早い段階で確認しておく必要があります。
7. 事業承継に伴う許認可手続きを支援します
坂本倫朗行政書士事務所では、親族や従業員への事業承継に伴う許認可の手続きを支援しています。
主な対象業種は、建設業、宅地建物取引業、一般貨物自動車運送事業、産業廃棄物収集運搬業です。
承継の方法や現在の許認可の状況を確認し、変更届、承継認可、新規許可申請など、必要な手続きに対応します。
報酬は個別見積りです。
許認可の種類や申請に必要な証明資料、申請先の数などによって作業内容が異なるため、事前に業務内容と報酬をご案内します。
事業承継全体のコンサルティングではなく、許認可手続きだけのご依頼も承っています。
詳しくは、当事務所の「親族・従業員への事業承継支援」のページをご覧ください。

