契約書を郵送で取り交わすとき、どちらが先に押印すればよいのでしょうか。
結論からいうと、契約書にどちらが先に押印するかについて、一般的な法律上の決まりはありません。
実務上は、契約書を準備して相手方へ送る側が先に署名・押印し、相手方が署名・押印した後、そのうち1通を返送する方法がよく使われます。

ただし、必ずこの順番にしなければならないわけではありません。取引の内容や両社の社内手続に合わせて決めることができます。
押印の順番で契約の効力が決まるわけではない
契約は、原則として、当事者双方の意思が合致することで成立します。
そのため、契約書への押印があることや、どちらが先に押印したかによって、契約の効力が決まるわけではありません。
契約書への署名・押印には、主に次のような役割があります。
- 契約内容について合意したことを明確にする
- 誰が契約書を作成したのかを確認しやすくする
- 後日、契約の成立や内容について争いが生じた場合の証拠とする
- 社内の承認手続が完了したことを確認する
もっとも、保証契約など、法律上、書面又は電磁的記録が必要とされる契約もあります。また、当事者間で「双方が契約書に署名又は押印した時点で契約が成立する」と定めることもできます。
したがって、具体的な契約については、押印の順番だけでなく、契約書の定めや契約成立までのやり取りも確認する必要があります。
紙の契約書を郵送で取り交わす場合の流れ
紙の契約書を郵送で取り交わす場合は、次のように進めるとスムーズです。
1.契約内容を確定する
まず、メールなどで契約書案を相手方へ送り、内容を確認してもらいます。
修正がある場合はこの段階で行い、双方が最終的な契約書の内容について合意してから印刷します。
内容が確定していない契約書に、先に署名・押印するのは避けた方が安全です。
2.契約書の部数と日付を確認する
一般的には、同じ内容の契約書を2通作成し、双方が1通ずつ保管します。
このとき、次の点も確認しておきましょう。
- 契約書を何通作成するか
- 契約締結日をいつにするか
- 契約の効力が発生する日をいつにするか
- 収入印紙が必要か
- 契印や割印が必要か
- 誰が署名・押印するか
契約締結日と効力発生日は、必ずしも同じである必要はありません。異なる日から効力を発生させる場合は、その日を契約書に明記しておきます。
3.契約書を送る側が署名・押印する
契約書を準備して郵送する側が、2通とも署名・押印します。
ただし、これは一般的な進め方にすぎません。相手方の社内規程などにより、受け取る側が先に署名・押印することもあります。
4.相手方へ契約書を郵送する
署名・押印した契約書2通を相手方へ送ります。
返送の手間を減らすため、次のものを同封しておくと親切です。
- 送付状
- 宛先を記載した返信用封筒
- 必要な金額の切手
- 署名・押印や返送方法についての案内
返送期限がある場合は、送付状やメールに記載しておきましょう。
5.相手方が署名・押印し、1通を返送する
相手方は2通の契約書に署名・押印し、そのうち1通を返送します。
返送された契約書を受け取ったら、次の点を確認します。
- 署名・押印の漏れがないか
- 契約書の差し替えや書き込みがないか
- 日付が正しく記載されているか
- 必要な収入印紙が貼られているか
- 契約書のすべてのページがそろっているか
確認後は、契約書の原本を適切に保管します。検索や紛失対策のため、スキャンデータも作成しておくと便利です。
お金を受け取る側が先に押印するとは限らない
「金銭を受け取る側が先に押印する」という一般的な決まりはありません。
代金や報酬を支払う側と受け取る側のどちらが先に押印するかは、契約の効力とは別の問題です。
通常の業務委託契約や売買契約であれば、支払の方向だけを理由に押印の順番を決める必要はありません。
ただし、契約締結と同時に次のような手続を行う取引では、当日の手順を事前に決めておくことがあります。
- 代金を支払う
- 物や権利を引き渡す
- 登記に必要な書類を交付する
- 契約書以外の重要書類を交換する
このような取引では、押印の順番だけを考えるのではなく、支払、書類の交付、引渡しなどをどの順番で行うのか、全体の流れを確認することが重要です。
契約書の日付にも注意する
双方が別の日に署名・押印した場合、契約締結日をいつにするのか迷うことがあります。
契約締結日の決め方には、例えば次の方法があります。
- 最後の当事者が署名・押印した日を契約締結日とする
- あらかじめ双方が合意した日を契約締結日として記載する
- 署名欄に、それぞれが署名・押印した日を記載する
どの方法を採用するかは、契約内容や社内ルールによって異なります。
重要なのは、契約書に記載された日付と、実際の締結経緯との関係を説明できるようにしておくことです。
また、契約締結日より前又は後の日から契約を適用したい場合は、例えば次のように効力発生日を明記します。
本契約は、2026年8月1日から効力を生ずる。
日付を後から形式的にさかのぼらせるのではなく、契約締結日と効力発生日を分けて記載する方が分かりやすいでしょう。
電子契約では郵送や押印が不要になる
電子契約サービスを利用すれば、紙の契約書を郵送したり、印鑑を押したりする必要がありません。
一般的には、契約書を作成した側が電子契約サービスから署名依頼を送り、相手方が内容を確認して電子署名などの手続を行います。
サービスによっては、複数の当事者について署名依頼を送る順番を設定できます。この場合も、法律上どちらを先にしなければならないという一般的な決まりがあるわけではありません。
電子契約には、次のような利点があります。
- 郵送にかかる時間を短縮できる
- 契約書の返送を待つ必要がない
- 押印漏れや返送忘れを減らせる
- 契約書を検索しやすい
- 契約締結までの記録を残しやすい
また、契約を電磁的記録だけで締結し、課税文書となる紙の契約書を作成しない場合、通常は印紙税の対象になりません。国税庁も、印紙税法上、電磁的記録は「文書」に含まれないと説明しています。
ただし、電子契約とは別に紙の契約書や変更契約書を作成した場合は、その紙の文書が課税文書に該当するかを個別に確認する必要があります。
参考:国税庁「変更契約書に電磁的記録(電子契約)を引用する旨の記載がある場合」
電子契約サービスの料金や無料プランの内容は変更されることがあるため、導入時に各サービスの公式サイトをご確認ください。
まとめ
契約書にどちらが先に署名・押印するかについて、一般的な法律上の決まりはありません。
紙の契約書では、契約書を準備して送る側が先に署名・押印し、相手方が署名・押印して1通を返送する方法がよく使われます。
ただし、押印の順番よりも重要なのは、次の点です。
- 押印前に契約内容を確定する
- 最終版の契約書であることを双方で確認する
- 契約締結日と効力発生日を明確にする
- 署名・押印後に書き換えや差し替えをしない
- 返送された契約書を確認して適切に保管する
相手方の社内手続や取引の内容も確認しながら、双方にとって進めやすい方法を決めましょう。
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