契約書はパソコンで作成しても有効?署名・押印との関係を解説

東京都板橋区の坂本倫朗行政書士事務所、所長の坂本倫朗です。

契約書の本文や当事者名をパソコンで入力しても問題ありません。現在では、契約書のほとんどがWordなどを使って作成されています。

契約書がパソコンで作られているか、手書きで作られているかによって、契約の効力が決まるわけではありません。

ただし、契約の効力と、その契約書を証拠として使用できるかどうかは別の問題です。

この記事では、パソコンで作成した契約書と、署名・押印との関係について説明します。

契約書はパソコンで作成しても問題ありません

契約書は、本文から署名欄までパソコンで作成できます。

次のような契約書も、一般的に使用されています。

  • 契約書の本文をパソコンで作成したもの
  • 会社名、住所、代表者名までパソコンで入力したもの
  • パソコンで作成した契約書を印刷し、署名又は押印したもの
  • 作成したPDFを電子契約サービスで取り交わしたもの

契約書をすべて手書きにする必要はありません。

パソコン入力か手書きかで契約の効力は決まりません

契約は、原則として、一方の申込みに対して相手方が承諾したときに成立します。

民法第522条第2項も、法律に特別な定めがある場合を除き、契約の成立には書面の作成などの方式を必要としないと定めています。

そのため、一般的な契約では、次のような事情だけで契約が無効になるわけではありません。

  • 契約書がパソコンで作られている
  • 契約書に手書きの部分がない
  • 当事者名がパソコンで入力されている
  • 契約書に押印がない

もっとも、保証契約など、法律上、書面又は電磁的記録が必要とされる契約もあります。

また、当事者間で「契約書への署名又は押印をもって契約が成立する」と定めている場合は、その定めも確認する必要があります。

参考:e-Gov法令検索「民法」

契約の効力と契約書の証拠力は別の問題です

契約書については、次の二つを分けて考える必要があります。

一つは、契約が成立し、法的な効力が生じているかという問題です。

もう一つは、争いが起きたときに、その契約書が本人の意思に基づいて作成されたものであることを証明できるかという問題です。

例えば、契約書に押印がなくても、双方が内容に合意していれば、契約が成立していることがあります。

一方で、相手方から次のように主張される可能性があります。

この契約書は見ていない。
この内容に合意した覚えはない。
印刷されている名前は、私が入力したものではない。

このような争いに備えるために、署名、押印、電子署名、メールのやり取りなどを残します。

署名・記名・押印の違い

契約書で使われる「署名」「記名」「押印」は、それぞれ意味が異なります。

署名

署名とは、本人が自分の氏名を手書きすることです。

自筆の署名は、誰が契約書を作成したのかを確認するための証拠になります。

ただし、署名があれば絶対に本人が作成したものと認められるわけではありません。署名の真偽が争われた場合は、筆跡だけでなく、契約締結までのやり取りなども含めて判断されます。

記名

記名とは、自筆以外の方法で氏名を表示することです。

例えば、次のようなものが記名に当たります。

  • パソコンで入力した氏名
  • 印刷された会社名や代表者名
  • ゴム印による氏名の表示
  • 本人以外の人による氏名の記入

パソコンで契約書に当事者名を入力することも、記名の一つです。

押印

押印とは、契約書に印鑑を押すことです。

「捺印」という言葉も使われますが、この記事では、印鑑を押す行為を「押印」と表記します。

実務では、本人が氏名を手書きして印鑑を押す「署名押印」と、印刷された氏名などに印鑑を押す「記名押印」があります。

パソコンで入力した氏名だけでも契約は成立しますか?

契約書に当事者名がパソコンで入力されているだけで、署名や押印がない場合でも、それだけを理由に契約が無効になるわけではありません。

ただし、相手方が契約書の作成や合意を否定した場合、印刷された氏名だけでは、誰がその契約書を作成したのかを確認しにくいことがあります。

そのため、署名や押印をしない場合は、契約書だけでなく、次のような記録も保存しておきましょう。

  • 相手方へ契約書を送信したメール
  • 相手方が契約内容を承諾したメール
  • 契約書を修正した経緯
  • 最終版の契約書データ
  • 発注書や注文請書
  • 納品、請求、支払などの履行記録
  • 契約締結について行ったチャットの記録

契約書だけでなく、契約が成立するまでの経緯を残すことが重要です。

民事訴訟法第228条は契約の有効性を定めたものではありません

民事訴訟法第228条第4項は、本人又はその代理人の署名又は押印がある私文書について、真正に成立したものと推定すると定めています。

「真正に成立した」とは、その文書が本人の意思に基づいて作成されたという意味です。

これは、署名又は押印があれば契約が必ず有効になるという規定ではありません。

裁判で契約書を証拠として使用する場合に、その契約書が本人の意思に基づいて作成されたものかどうかを判断するための規定です。

また、契約書に印影があれば、無条件に本人が押印したものと認められるわけではありません。

その印鑑を本人が管理していたのか、本人の意思に基づいて押印されたのかなどが争われることもあります。

署名や押印だけに頼らず、契約締結までのメールや承認記録も保存しておく方が安全です。

参考:経済産業省「契約における押印の見直し」

押印のない契約書も証拠になります

押印がない契約書であっても、契約の成立や内容を示す証拠として使用できることがあります。

証拠になるのは、契約書だけではありません。

例えば、次のような資料も、契約の成立や内容を判断する材料になります。

  • 契約書を添付して送信したメール
  • 契約内容に同意する旨の返信
  • 見積書や発注書
  • 打ち合わせの記録
  • チャットやメッセージの履歴
  • 納品記録
  • 請求書や振込記録

押印がないから証拠にならないわけではなく、どのような経緯で契約が成立したのかを説明できることが重要です。

メールで承諾を得る場合の注意点

メールで契約内容への承諾を得る場合は、どの契約書に同意したのかが分かるようにしておきましょう。

例えば、次のような返信だけでは、後から対象となる契約書が分かりにくくなることがあります。

確認しました。問題ありません。

契約書のファイル名や作成日を示したうえで、次のように確認すると分かりやすくなります。

添付の「業務委託契約書(2026年7月20日版)」の内容に同意します。

契約書を修正した場合は、古いファイルと最終版が混在しないように管理することも必要です。

ファイル名に日付や版番号を付け、どれが最終版なのかを双方で確認しておきましょう。

電子契約を利用する方法もあります

紙の契約書に署名・押印する代わりに、電子契約サービスを利用する方法もあります。

電子契約サービスでは、一般的に次のような記録を残すことができます。

  • 契約書を送信した日時
  • 契約書を確認した人
  • 同意又は承認した日時
  • 契約締結後の改変を確認するための情報
  • 契約締結までの操作履歴

電子署名法では、本人による一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書について、本人の意思に基づいて作成されたものと推定する制度が設けられています。

ただし、PDFに印影の画像を貼り付けただけのものと、電子契約サービスによる電子署名は同じではありません。

電子契約を導入するときは、本人確認の方法、署名の仕組み、操作記録の保存方法などを確認しましょう。

参考:法務省「電子署名法の概要について」

パソコンで契約書を作成するときの確認事項

パソコンで契約書を作成すること自体に問題はありません。

ただし、作成や締結の際には、次の点を確認しておきましょう。

  • 当事者の会社名、住所、代表者名が正しいか
  • 契約内容が最終的に合意したものになっているか
  • 古い契約書案が混在していないか
  • 契約締結日と効力発生日が明確になっているか
  • 契約書を何通作成し、誰が保管するか
  • 署名又は押印を行うか
  • 押印しない場合に、承諾の記録をどのように残すか
  • 電子契約を利用する場合に、締結記録を保存できるか
  • 法律上、書面などが必要とされる契約ではないか

パソコンで作成したかどうかよりも、契約内容を確定し、双方が合意したことを確認できる状態にしておくことが大切です。

まとめ

契約書は、パソコンで作成しても問題ありません。

契約書の本文や当事者名がパソコンで入力されていても、それだけを理由に契約が無効になることはありません。

一方で、契約の効力と、その契約書を証拠として使用できるかどうかは別の問題です。

署名や押印には、本人が契約書の作成に関与し、契約内容に合意したことを確認しやすくする役割があります。

署名や押印をしない場合は、契約書の最終版に加えて、相手方が契約内容を承諾したメールや、契約締結までのやり取りを保存しておきましょう。

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この記事の執筆者

行政書士 坂本倫朗(さかもと・みちろう)

坂本倫朗行政書士事務所代表。産業廃棄物収集運搬業許可をはじめとする許認可申請、IT・Web事業者向けの契約書・利用規約の作成、補助金・融資支援を行っています。
また、経営者とそのご家族を中心とした相続手続・生前対策に対応しています。
IT分野での実務経験を生かし、生成AIを業務で活用するための仕組みづくりや、契約・責任・業務ルールの整備にも取り組んでいます。

行政書士登録番号:第17081604号
所属:東京都行政書士会
認定経営革新等支援機関(109813007514)
Webサイト:https://sakamoto316.tokyo/

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