東京都板橋区の坂本倫朗行政書士事務所、所長の坂本倫朗です。
取引を始めるときには、見積書、注文書、注文請書、契約書など、似たような書類が登場します。
なかでも分かりにくいのが、注文書と注文請書の違いです。
注文書は、発注者が「この内容で注文します」と伝える書類です。注文請書は、受注者が「その注文を引き受けます」と回答する書類です。
この記事では、注文書と注文請書を対比しながら、見積書や契約書との関係、記載する事項、作成時の注意点を説明します。
見積書・注文書・注文請書・契約書の関係
一般的な取引では、まず受注者が見積書を提出し、業務内容や金額、納期などの条件を提示します。
その条件を確認した発注者が注文書を送り、受注者が注文請書を返すことがあります。一方、合意した条件を一つの契約書にまとめ、双方で締結する方法もあります。
継続的な取引では、先に取引基本契約書を締結し、個別の取引について注文書と注文請書を取り交わす方法もよく用いられます。

見積書で条件を確認した後、注文書と注文請書を取り交わす方法もあれば、契約書を締結する方法もあります。また、基本契約書を締結したうえで、個別の取引ごとに注文書と注文請書を取り交わすなど、両者を併用することもできます。
この図は代表的な流れを示したものです。書類の順番や契約が成立する時点は、当事者のやり取りや合意内容によって異なります。
見積書とは
見積書は、受注者が発注者に対して、商品や業務の内容、数量、金額、納期などの条件を提示する書類です。
発注者は、見積書をもとに条件を検討し、必要があれば内容を調整します。
見積書は、一般には契約締結前の検討資料として使われます。ただし、書類の名称だけで法的な意味が決まるわけではありません。内容やその後のやり取りによっては、見積書が契約の申込みに当たったり、契約内容を示す資料になったりすることがあります。
注文書とは
注文書は、発注者が受注者に対して、商品や業務を注文する意思を示す書類です。「発注書」と呼ばれることもあります。
見積書を受け取った後に注文する場合は、見積書の日付や見積番号を記載しておくと、どの条件に基づく注文なのかが分かりやすくなります。

注文書を送っただけで、常に契約が成立するとは限りません。注文書が契約の申込みに当たる場合には、原則として受注者が承諾することで契約が成立します。
もっとも、それまでのやり取りですでに合意が成立しており、注文書が確認書類として発行される場合もあります。契約成立の時点は、書類名ではなく、当事者の意思表示と合意の経過から判断されます。
注文書Excellサンプルのダウンロード
※本サンプルは一般的な書式例です。すべての取引にそのまま利用できるものではありません。実際に使用する際は、取引内容や適用法令に応じて修正してください。
注文請書とは
注文請書は、受注者が発注者に対して、注文を引き受ける意思を示す書類です。「請書」「受注書」と呼ばれることもあります。
注文請書には、注文書の日付や注文番号を記載し、どの注文に対する回答なのかを明確にします。

注文書が契約の申込みに当たり、注文請書がその内容をそのまま承諾するものであれば、両書類は契約の成立と内容を示す重要な証拠になります。
注文請書に、注文書とは異なる金額、納期その他の条件を記載した場合には注意が必要です。条件を変更した回答は、元の注文に対する単純な承諾ではなく、新たな申込みと評価されることがあります。その場合は、変更後の条件について発注者の合意を確認する必要があります。
注文請書Excellサンプルのダウンロード
※本サンプルは一般的な書式例です。すべての取引にそのまま利用できるものではありません。実際に使用する際は、取引内容や適用法令に応じて修正してください。
注文書と注文請書の違い

注文書と注文請書の違いを整理すると、次のようになります。
| 項目 | 注文書 | 注文請書 |
|---|---|---|
| 作成する側 | 発注者 | 受注者 |
| 送る相手 | 受注者 | 発注者 |
| 主な役割 | 注文の内容を示す | 注文を引き受ける意思を示す |
| 対応する意思表示 | 申込みに当たることがある | 承諾に当たることがある |
| 特定しておきたい書類 | 見積書 | 注文書 |
| 固有の記載例 | 見積番号、「以下のとおり注文します」 | 注文番号、「上記注文をお引き受けします」 |
注文書と注文請書は、それぞれ単独で考えるのではなく、対応する一組の書類として管理することが大切です。
注文書と注文請書に記載する事項
注文書と注文請書には、原則として対応する取引条件を記載します。
両書類で確認する主な事項は、次のとおりです。
- 発注者と受注者の名称
- 注文日(注文請書には、注文を引き受けた日も記載)
- 注文番号
- 商品又は業務の内容
- 数量
- 単価と合計金額
- 消費税の取扱い
- 納期又は業務完了日
- 納品場所又は納品方法
- 検査・検収の方法と期間
- 支払期日と支払方法
- 交通費、材料費その他の費用負担
業務委託では、必要に応じて、次の事項も定めます。
- 業務の範囲
- 成果物の内容と形式
- 修正の範囲と追加料金
- 再委託の可否
- 知的財産権の取扱い
- 秘密情報の取扱い
すべての条件を注文書と注文請書に繰り返し記載する必要はありません。取引基本契約書や見積書の条件を適用する場合は、その書類の日付や番号を記載し、どの条件が適用されるのかを明確にしておきます。
ただし、複数の書類の内容が食い違っていると、どの条件が優先するのか分からなくなります。注文書、注文請書、見積書、取引基本契約書の内容が一致しているかを確認しましょう。
契約書との違い
契約書は、当事者が合意した権利と義務を一つの書面にまとめ、双方が署名、記名押印又は電子署名などを行う形が一般的です。
これに対し、注文書と注文請書は、発注者と受注者がそれぞれ別の書類を作成して取り交わします。
| 項目 | 契約書 | 注文書・注文請書 |
|---|---|---|
| 書類の形 | 一つの書面に双方の合意をまとめることが多い | 発注者と受注者が別々の書類を作成する |
| 署名・押印等 | 双方が行う形式が多い | 各書類の作成者だけが行う形式が多い |
| 向いている取引 | 条件が複雑な取引、重要な取引 | 条件が定型化された個別取引、反復継続する取引 |
| 定める内容 | 取引条件全体 | 個別の注文内容が中心 |
契約は、原則として当事者の申込みと承諾の合致によって成立し、法令に特別の定めがある場合を除き、契約書の作成や押印だけが成立要件になるわけではありません。
したがって、「契約書という題名がないから法的効力がない」「双方の押印がないから契約ではない」とは限りません。反対に、書類の題名が「注文請書」であっても、記載内容によっては契約書としての性質を持つことがあります。
継続取引では取引基本契約書と組み合わせる
同じ相手と繰り返し取引する場合、毎回の注文書と注文請書だけで、秘密保持、知的財産権、損害賠償、契約解除などの条件まで定めるのは大変です。
そこで、継続する取引に共通するルールを取引基本契約書で定め、案件ごとの商品、数量、金額、納期などを注文書と注文請書で定める方法があります。
- 取引基本契約書:すべての個別取引に共通するルール
- 注文書・注文請書:案件ごとに変わる具体的な条件
この方法を採用する場合は、取引基本契約書に、個別契約がどの時点で成立するのか、基本契約書と注文書などの内容が食い違った場合にどちらを優先するのかを定めておくと明確です。
発注内容の明示が法律上必要になる取引もある
すべての取引について、注文書という名称の書類を作成する義務があるわけではありません。
ただし、取引の内容や当事者の規模などによっては、法律により発注内容や取引条件の明示が必要になります。
例えば、取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)が適用される取引では、委託事業者は、発注の際、直ちに発注内容などを書面又は電磁的方法で明示しなければなりません。
また、フリーランス・事業者間取引適正化等法が適用される業務委託でも、業務委託事業者には取引条件を直ちに書面又は電磁的方法で明示する義務があります。
これらの法律が適用されるかどうかは、取引内容、資本金、従業員数、委託先の事業形態などによって異なります。「注文書を発行しているから大丈夫」と考えるのではなく、必要な事項が実際に記載されているかを確認する必要があります。
参考:
注文請書と収入印紙
収入印紙が必要かどうかは、「注文書」「注文請書」「契約書」といった題名だけでは決まりません。紙の書類に記載された取引内容から、印紙税法上の課税文書に当たるかを判断します。
例えば、請負に関する契約の成立を証明する注文請書は、印紙税法上の課税文書に当たることがあります。一方、売買に関する書類など、内容によっては課税文書に当たらない場合もあります。
個別の書類については、契約の種類、記載内容、契約金額などを確認して判断してください。
参考:
まとめ
注文書は、発注者が注文の内容を示す書類です。注文請書は、受注者がその注文を引き受ける意思を示す書類です。
両書類を取り交わすときは、注文番号などによって対応関係を明らかにし、商品又は業務の内容、金額、納期、支払条件などが一致していることを確認します。
また、継続的な取引では、共通するルールを取引基本契約書に定め、個別の条件を注文書と注文請書で定める方法が便利です。
書類の名称だけで判断せず、どの条件について、いつ、どのような合意が成立したのかが分かるように作成・保管しましょう。
はじめての契約書作成でお困りの方に
契約書作成のルールは独特で、入門書を読んでも難しいと感じることがあります。
「じっくり勉強している時間はないけれど、契約書作成のポイントを早くつかみたい」という方のために、初心者向けのテキスト「すらすら読めて一生使える 契約書のルールとマナー」を作成しました。
契約書の書き方だけでなく、契約を結ぶまでのやり取りや実務上の作法についても解説しています。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

また、契約書の作成を依頼したい方や、ご自身で作成した契約書のチェックをご希望の方は、当事務所のサービス「IT契約書作成のミカタ」までご相談ください。
※法令情報は2026年7月時点のものです。実際の取引への適用については、個別の事情に応じて確認する必要があります。



コメント