契約書を郵送する前に確認すること
封筒を用意する前に、まず契約書そのものを確認します。
最低限、次の点を確認してください。
- 相手方の会社名、所在地、代表者名に間違いがないか
- 交渉で確定した内容がすべて反映されているか
- 契約書の日付と契約の開始日に矛盾がないか
- 別紙や仕様書などの添付書類がそろっているか
- 契約書を何通作成するのか
- 誰が先に署名又は押印するのか
- 何通返送してもらうのか
- 収入印紙が必要な契約書か
- 返送期限はいつか
修正途中の契約書を誤って送らないよう、ファイル名に「最終版」「締結版」などと付けて管理することも大切です。
発送前の契約書はPDFで保存しておきましょう。自社が先に署名又は押印した場合は、その状態もスキャンして記録に残します。
契約書の部数と返送方法を決める
2者間の契約では、同じ内容の契約書を2通作成し、契約成立後に双方が1通ずつ原本を保管する方法が一般的です。
例えば、自社が先に署名又は押印する場合は、次のように進めます。
- 同じ契約書を2通用意する
- 自社が2通とも署名又は押印する
- 2通とも相手方へ送る
- 相手方が2通とも署名又は押印する
- 相手方が1通を保管し、もう1通を返送する
ただし、必ずこの順番でなければならないわけではありません。相手方が先に署名又は押印する場合もあります。
大切なのは、送付状で「どこに署名又は押印して、何通返送してほしいのか」を明確に伝えることです。
収入印紙の必要性を確認する
すべての契約書に収入印紙が必要なわけではありません。
請負に関する契約書や継続的取引の基本契約書など、印紙税法上の課税文書に該当する場合に必要となります。契約書の名称ではなく、記載されている内容によって判断されるため注意してください。
契約書を2通作成し、それぞれを契約成立の証拠となる原本として保管する場合は、原則として2通とも課税対象となり得ます。「写し」「副本」と表示されていても、契約成立を証明する目的で作成された文書は課税対象になることがあります。国税庁も契約書の写し・副本の取扱いを案内しています。
どちらが収入印紙を用意するのか、誰がどの契約書を保管するのかについても、発送前に確認しておきましょう。
契約書は折って送っても無効にはならない
契約書を折ったからといって、契約書が無効になることはありません。
ただし、契約書は長期間保管する重要な書類です。折り目や破損を避けるため、A4サイズの契約書は折らずに送る方が扱いやすいでしょう。
クリアファイルに入れたり、厚紙を添えたりすると、配送中の折れや水濡れを防ぎやすくなります。ホチキス留めや製本をしている場合は、ページの抜けや別紙の入れ忘れがないことも確認してください。
「契約書を折ることが禁止されている」のではなく、重要書類として丁寧に扱うという考え方です。
追跡できる方法で送る
契約書は、普通郵便よりも追跡できる方法で送ることをおすすめします。
利用しやすいのはレターパックです。
- レターパックライト:全国一律430円。相手方の郵便受けに配達
- レターパックプラス:全国一律600円。対面で配達し、受領印又は署名を受ける
どちらも追跡サービスを利用できます。日本郵便の案内で最新の料金と取扱条件を確認してください。
重要な契約書で対面による受渡しを希望する場合は、レターパックプラスが使いやすいでしょう。発送後は追跡番号を保存し、必要に応じて相手方にも知らせます。
ただし、レターパックの追跡情報は、封筒の中にどの書類が入っていたかを証明するものではありません。
一般書留に付けられる配達証明も、郵便物を配達した事実を証明するサービスであり、実際の受取人が誰だったかまで証明するものではありません。日本郵便の配達証明の説明でも、この点が明記されています。
送付状を付ける
契約書には、簡単な送付状を付けます。
送付状には、次の内容を記載します。
- 送付日
- 宛先
- 差出人
- 契約書の名称
- 同封した部数
- 相手方に署名又は押印してもらう場所
- 返送してもらう部数
- 返送期限
- 問い合わせ先
送付状は、次のような内容で構いません。
契約書送付状の例
〇年〇月〇日
株式会社〇〇
〇〇部 〇〇様株式会社〇〇
担当 〇〇契約書送付のご案内
いつもお世話になっております。
下記の契約書をお送りしますので、内容をご確認のうえ、所定の箇所にご署名・ご押印をお願いいたします。ご署名・ご押印後は、1通を貴社で保管していただき、もう1通を同封の返信用封筒にて〇月〇日までにご返送ください。
記
〇〇契約書 2通
返信用封筒 1通以上
署名又は押印する場所が分かりにくい場合は、契約書の文字を隠さない位置に付箋を付けておくと親切です。
返送用の封筒を用意する
相手方に契約書を返送してもらう場合は、返信用封筒を同封します。
返信用封筒には、あらかじめ次の準備をしておきましょう。
- 自社の郵便番号、所在地、会社名を記載する
- 必要な金額の切手を貼る
- 「契約書在中」と記載する
- 必要に応じて追跡できる返送方法を指定する
返信用封筒そのものを折りたたんで同封することに問題はありません。ただし、返送される契約書を折らずに保管したい場合は、A4サイズの契約書が入る封筒を用意します。
相手方に封筒や切手を準備してもらうと、それだけ返送が遅れる原因になります。返送に必要なものをこちらで用意しておくと、契約締結をスムーズに進められます。
返送された契約書を確認する
契約書が返送されたら、そのまま保管せず、次の点を確認します。
- 必要な署名又は押印がそろっているか
- 契約日が正しく記入されているか
- すべてのページと別紙がそろっているか
- 契約書が差し替えられていないか
- 必要な収入印紙が貼付され、消印されているか
- 自社が保管する契約書として間違いないか
締結済みの契約書はスキャンしてPDFでも保存します。紙の原本を廃棄してよいという意味ではありません。原本は社内の保管ルールに従って管理してください。
電子契約を利用する方法もある
相手方の同意が得られ、電子化できる契約であれば、電子契約サービスを利用する方法もあります。
電子契約では、郵送や返送が不要になり、契約締結までの時間を短縮できます。電子署名や操作履歴によって、作成者の確認や改ざんの防止にも役立ちます。
電子署名法では、本人による一定の要件を満たす電子署名が付された電子文書は、真正に成立したものと推定されます。デジタル庁の電子署名に関する案内も確認しておくとよいでしょう。
また、印紙税の課税対象となるのは紙の課税文書です。国税庁は、電子署名を付けてメールで送信した電磁的記録について、印紙税の課税対象となる文書には含まれないと説明しています。国税庁の質疑応答事例を参照してください。
ただし、電子データを送った後で紙の原本も相手方に交付する場合は、その紙の契約書について印紙税が発生することがあります。また、すべての契約や手続が電子化できるとは限らないため、契約の種類ごとに確認が必要です。
契約書は返送と保管まで決めてから送る
契約書の送付で大切なのは、発送方法だけではありません。
誰が署名又は押印し、何通返送し、最終的に誰がどの原本を保管するのかまで決めておく必要があります。
送付前の確認、送付状、返信用封筒、追跡番号の保存、返送後の確認を一連の作業として管理しましょう。
契約書の作成から送付まで、基本をまとめて確認したい方へ
契約書には、本文の書き方だけでなく、署名・押印、製本、郵送、返送、保管にも独特のルールや実務上の注意点があります。
初めて契約書を担当する方に向けて、契約書を作る前の準備から締結後の管理までを77ページにまとめました。


